慎ましやかに戸を叩く恋の色香に庭は嬉しくつゆとなった夜風を落とす町はだんだん熱を帯びて僕と君の頬を染め歩けば風見鶏が振り返り止まれば猫が覗き見る塀の上から神様のごとそれは今日二人のためばかりでなく世界が毅然と回っているから濃紺の道を鳴らす豊かな音に誰か嬉しくそれが僕であるならば君もそうであってほしい「夏鳥」
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