詩人:こじろう | [投票][編集] |
夏の空は果てのないほど高く
限りなく明るい青であった。
旅人は言った。
「ここが『終わり』だ」
旅人は空を見上げた。
風が言った。
「ここには特別なものは何も無い。
どうしてここが『終わり』だと?」
風は立ち止まり、大気となった。
旅人は答えた。
「何も無くはない。
しかし、『ここ』にあるのではない」
旅人は目を細めた。
大気は言った。
「それはどこにあるのですか?」
大気はまた少しずつ動き出した。
旅人は答えた。
「それは君の中にあるよ」
旅人は息を吸った。
大気は言った。
「私の中に?それは光栄なことだ。
もう行かなければ。お元気で」
大気はまた風になった。
旅人は言った。
「お元気で」
旅人は手を振った。
風はどこかへ行ってしまった。
あとに秋の欠片を落としていった。
旅人はその欠片のそばにそっと横たわった。
自分の次の旅人と、
次の夏のことを思って目を閉じた。