詩人:中村真生子 | [投票][編集] |
灰色の空に響くよ
澄み切った歌声が…。
その歌声に合わせて
みんなが歌を口づさむ、
喜びに満ちた心で…。
すると雲が切れて
青い空が見えてきた。
すると雲は消えて
お日様が見えてきた。
青い空に響くよ
澄み切った歌が…。
光とともにこだますよ
喜びの歌が…。
すっかり雨は上がり
爽やかな風が通り過ぎていく。
澄み切ったあの歌声には
青い空がよく似合うから…。
喜びに満ちた心には
きらめく太陽がよく似合うから…。
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散歩をする人はまばらで
釣り人はまったくいないほど
強風が吹き荒れている朝。
海は白波と轟音を立て
川は逆波が立っている。
草木は激しくたなびき
人は押されそうになる。
人間にとっても
草木にとっても受難の朝。
けれど彼は違う。
そう、トンビにとっては…。
待ってましたとばかりに
風に乗り
技を披露するよう
大きな円を描きながら
ゆうゆうと空を舞う。
頭を上げてその姿に見とれ、
風の朝が少し楽しくなる。
トンビのことを英語では
Black kite(黒い凧)と言うらしい。
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農家の人が持ち寄った
野菜の売り場で
ぎゅっと口を一文字に結んだ
青年に出会う。
名札をつけていたので
出品をしている人に違いない。
そのぎゅっと結んだ口が
印象的で
名札の名前の
野菜を探してみる。
すると、入り口に近い
特別栽培のコーナーにその名前が…。
ぎゅっと結んだ口のような
真っ直ぐな白ネギぎをカゴに入れる。
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庭の曼珠沙華が咲き誇り
草むらでは薄がしなやかな穂を
気持ちよさそうに揺らしている
秋晴れの爽やかな朝。
見上げる
澄み切った青い空が
目を滲ませる。
「sky bar」で友が
飲んでいる気がして。
変わらぬ温かいあの笑顔で
時折、手を振りながら。
そして、手を振りかえす、
「また飲もうね」と。
お母様と
友の思い出話をした翌朝に…。
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朝、山を越える列車に乗る。
田んぼは
実りの季節を迎えて
金色の輝き、
あるいはすでに刈り取られ、
山間のそば畑には
一面の白い花。
実りの秋が車窓に広がる。
東側の窓を見ると
カーテンが閉められていた。
その隙間から
絞りたての
エキストラヴァージン
オリーブオイルのような
黄金色の光が
床にとろりと流れ込む。
列車が揺れるたびに
とろりとろりと…。
列車の床も実る秋。
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花は咲く
心を寄せる
あなたのために…。
雨の日はともに泣き
日照りの日はともに憂い。
花は咲く
心を寄せる
あなたのために…。
風の日はともに震え
雪の日はともに凍え。
花は咲く
心を寄せる
あなたのために…。
今日もこうして
ほら、あなたのそばで…。
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風のない雨の朝。
川面に落ちた雨粒たちの
丸くて小さな波紋が
なめらかな水面に響きあう。
青海波の模様となって…。
やがて
川に潜った雨粒たちは
中から真珠を拾いあげ
水の上へと放り投げる。
落ちるたびに一つずつ…。
そうして
川と雨は
オルゴールの楽譜となって
流れてゆく。
奏でているのは
地球(ふるさと)の歌。
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山の端に日が昇り
川面に金の道を作り始めたとき
頭上の黒い雲から
パラパラと冷たい雨。
「もしや!」
と天を仰げば
「やっぱり!」。
大地から大地へと
きれいな半円形の虹。
ひとりで縄跳びをするには
大きすぎるから
「そうだ!」
みんなで大縄跳びを
するとしよう!