詩人:中村真生子 | [投票][編集] |
笑うように
穏やかに木々が揺れる。
踊るように
軽やかに鳥が飛ぶ。
誇らしげに花は咲き
忙しそうに蜂たちは飛び回る。
海は夏を思い出し
山は冬に別れを告げる。
居るということ
それだけで幸せな朝。
三年(みとせ)の思いを
行いに移した
キミの今朝の心もかくあれ。
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物語の上に
物語が降り…
物語の上に
物語が積もり…。
その悠久の揺籃に
今日も
物語の上に
物語が降り…
物語の上に
物語が積もり…。
ハラハラと
花の散るごとく…。
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母から譲り受けた水屋の上の
ペン差しの中に
埃をかぶった万華鏡が一つ。
ビーズや折り紙は入っていない
景色を楽しむための
テレイドスコープだ。
いつからここにあったのだろう。
なにげに
手に取って埃を拭き
部屋の中や庭を見てみる。
見慣れた風景が
パターンになってアートを描き出す。
見慣れた風景の
見慣れぬ風景に
しばし居ながらにして旅をする。
薄曇りの春の朝に。
*水屋=茶箪笥
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蕗の薹味噌、蕗の佃煮、
筍煮、タラの芽の天ぷら…。
こっちに住むようになって
よく食べるようになった
春のご馳走。
その名の通り
家族や知り合いの人が
春の野に走り馳せ
取ってきてくれた旬の恵み…。
食べるものが変わってきて
何かが変わってきた。
否。
食べるものが変わってきて
確かに変わってきた。
ありがたい
ご馳走に感謝!
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キミは語りき。
「生とは奇跡なり」と。
キミは語りき。
「今とはかけがえのなき時なり」と。
キミはキミの希望通り
ひっそりと先に逝く。
遅れてやってきた
桜の盛りに。
キミは語りき。
「生とは奇跡なり」と。
「今とはかけがえのなき時なり」と。
在りし日を輝かせて。
思い出すは
ともに過ごした懐かしい時間。
合掌。
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温かく穏やかだった
昨日の夕方。
バスを待ちながら空を見上げると
ビルとビルの間に
急ぎ足で旅する雲たち。
夜になって風が強まり
一夜明けて
今もゴーゴーと吹き荒れている。
こんな風の中を
雲たちはどんな勢いで
旅しているのだろうと思って
カーテンを開けると
否、どっしり腰を据えていた。
まるでお茶でも飲みながら
静かに見下ろしているように。
木々は揺れに揺れ
川さえも海のように波立っているというのに。
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青い光、赤い光…
黄の光、紫の光…
緑の他の
いただいた光で
体を養い
その光で
花びらを染め
それぞれの光となって
大地を輝かせる花々よ。
花は輝く。
いただいた光の
お返しをするように…。
お日様に向かって
あるいは
照れくさそうにうつむき加減に
「ありがとう」と。
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喧噪は雨粒に吸収され
雨粒は和音となって
大地の鍵盤をやさしくたたく。
小鳥たちは控えめで
きっと木立の中で
雨粒の音楽を聴いているのだろう。
木々や花々は身を清め
銀の飾りを付けて
誇らしげにすくっと佇む。
ミモザはとりわけ美しく
黄色い花や羽の葉に
いっぱいの銀の玉。
4月の雨の朝。
絶え間のない雨粒に
天と地が結ばれて
天と地が
ひとつであること思い出す。
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闇のあとに陽は昇り
闇のあとに芽は吹き
闇のあとに花は開く。
闇はあらゆるものの
生まれいずる故郷。
人もまた
闇のあとに目を覚ます。
そして光の中で
ともに輝く。
ひとつに溶け合って…。
さりげなく
ここにある闇と光の呼吸。