ホーム > 詩人の部屋 > 中村真生子の部屋 > 新着順表示

中村真生子の部屋  〜 新着順表示 〜


[50] その源
詩人:中村真生子 [投票][編集]

いつもの景色が

より艶やかに見えた。

有り難い

今、この時を手繰り寄せ

その源を見つけし時。

いつもの時間が

より幸せに思えた。

手繰り寄せた源の

その有り難さに気づきし時。

有り難いその源は

手繰り寄せれば人に行きあたり

さらに手繰り寄せれば

やはり人に行きあたる。

その有り難さに気づきし時

ご褒美にと

景色がほほ笑み

時間が歌を口ずさむ。


2012/03/18 (Sun)

[49] 80年も昔の話
詩人:中村真生子 [投票][編集]

彼岸の入りで実家に行く。

今日は暖かゆえ

電気の入っていないこたつに入り

とりとめのない話を母とする。

母の母は母乳の出が悪かった。

けれど母は口をつぐんで

母乳以外は飲まなかったという。

そこで近所の同い年の子のお母さんから

お乳を飲ませてもらって育ったという。

いろいろなお母さんから

「うちの子は終わったら、来て」と言われて。

子どもたちもたくさんいて

みんなで子育てをしていた

80年も昔の話。

そして初めて聞く

母の赤ちゃんの時の話。

それから母は

「いろんなことがあったなあ」とぽつり。

あの日々から今日までを

ひとり振り返るように…。



2012/03/17 (Sat)

[48] ある小児科の先生の話
詩人:中村真生子 [投票][編集]

街の商店街の中ほどの
ビルの2階に小さな小児科が一つ。
開業して37年。
先生のところには
だんだん患者がいなくなる。
なぜなら
ここに来た子たちは
みんな元気になっていくから…。
先生は注射もしなければ
薬も出さないけど
子どもの健康にとって悪いことは
ちょっとばかし手厳しい。
だから親は耳が痛い。
けれどそんな噂を聞いて
また新しい親子がやってくる。
今、81歳の先生。
開業以来休んだのは
数年の前にたった1日。
奥様の葬儀の日だけだった。
街の商店街の中ほどの
ビルの2階に
医療機器ではなく本に囲まれた
寒いけれど温かい小児科医が一つ。
先生に出会えた子どもは幸せだ。

2012/03/16 (Fri)

[47] 記憶の街
詩人:中村真生子 [投票][編集]

かすれゆく

記憶の街に佇む。

喧噪が流れていく。

さわさわと…。

何かを囁くように…。

その音に耳を傾ける。

遠い記憶に耳を傾けるように…。

けれどもう何もわからない。

ひとり岸辺に残されて

ただ佇む。

ふと友の笑顔。

遠い記憶から流れてきた

花のごとく…。

2012/03/15 (Thu)

[46] 一粒の光
詩人:中村真生子 [投票][編集]

雪のさなか雲が切れ

塀に宿った一粒の光を

朝日が虹の色ごとく輝かせる。

その一粒の光を。

一粒の種が地で芽吹くように

一粒の光が心に芽吹く。

幼けないその芽吹きが

心に根付くことを願わん。

何かわからねど

何かよきものが咲くことを願って。

未だ遠い心の春の日に。

2012/03/15 (Thu)

[45] のどの小骨
詩人:中村真生子 [投票][編集]

のどに引っかかった

小骨が一つ。

飲み込もうにも飲み込めない。

時折

自己主張をするように

ちくちくと痛みだす。

あの日

のどに引っかかった

小骨が一つ。

けれど引っかけていたのは

自分の小骨。

2012/03/13 (Tue)

[44] 白い涙
詩人:中村真生子 [投票][編集]

キャンドルナイトが

明けて

点々と蝋のあと。

こびりついて消えぬ

白い涙。

2012/03/12 (Mon)

[43] キミへ
詩人:中村真生子 [投票][編集]

心に思ったことで

キミは一歩を踏み出した。

0は限りなく0であるが

1は限りない無限の始まり。

話したことで

キミはもう一歩踏み出した。

今度は

胸のうちから外へと。

そして明日には

きっとまた一歩。

できない大きなことを考えるのをやめ

できる小さなことを考え始めた。

キミは歩むことを始めた。

自らとともに…。

できない大きなことを成し遂げるために。

2012/03/11 (Sun)

[42] 春のおすそ分け
詩人:中村真生子 [投票][編集]

バケツに入れられた

とりどりの花。

キンセンカ、ストック、

水仙、チューリップ、菜の花…。

花畑にいる気分で

ぐるぐる回って買ったのは

クリーム色と紫色の八重のストック。

1束3本で200円。

分かれている茎を切ると

たくさんの本数に…。

束にして部屋に飾る。

空き瓶に入れてトイレにも飾る。

待ちわびる春の

心華やぐおすそ分け。

けれど、弥生も半ば近いのに

また明日から雪マーク。


2012/03/10 (Sat)

[41] 移ろい
詩人:中村真生子 [投票][編集]

移ろい
文具店でうろうろしていると

レター用品が目に入る。

おぼろげに顔が浮かんで

ミモザの絵柄の葉書を手に取る。

またおぼろげに顔が浮かんで

桜の絵柄の便箋を手に取る。

クリスマスの絵柄の葉書と

雪景色の絵柄の便箋も

冬の初めに

そんなふうに買ったのだろう。

おぼろげに顔を

思い浮かべながら…。

届けられた

冬模様の便りの上に

時間が静かに降り積もる。

ミモザの絵柄の葉書と

桜の絵柄の便箋を手に取り

少しずつ冬がおぼろげになり

少しずつ春になっていく…。


2012/03/09 (Fri)
290件中 (241-250) [ << 21 22 23 24 25 26 27 28 29
- 詩人の部屋 -