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中村真生子の部屋  〜 新着順表示 〜


[40] 三度目の出会い
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かつて扉をたたいた時

扉は固く閉ざされていた。

再度、扉をたたいた時

扉は少しだけ開いた。

けれどすぐに閉ざされた。

三度、扉をたたいた時

扉は中に入れるだけ開いた。

そして一歩踏み入れた。

目が慣れてきて

映し出されたのは

見覚えのある風景だった。

どの扉もどの壁も…。

今度はうちからたたくのだ。

たくさんの扉を開けて

光と風を入れ

自分から自由になるために…。

2012/03/09 (Fri)

[39] いきかたを変える
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春一番が吹いた夕方

いつもと違った道を通って家に向かう。

いつも前を通っている

小さなお社がある

いつもの道に近づく。

お社の角を曲がって

いつもの道に出ようとしたとき

いつもの道からは木立で

見えないところでお地蔵様が

手を合わせてこちらを見ておられる。

慌てて手を合わせて拝むと

お地蔵さまも手を合わせて

拝んでくださる。

ありがたい気持ちになる。

少し行き方を変えて

ほんの少しその日の生き方が変る。

心の中にも春一番。


2012/03/07 (Wed)

[38] ネギじゃこ卵焼きの朝
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朝食事の準備をする。
いつもと同じような朝。
ネギを刻みながら
けれど
今日はもう二度とないことを
ふと思う。
だからというわけではないが
だからというわけであるからかもしれないが
卵焼きにネギに加えて
じゃこを入れてみる。
少し多めに。
窓の向こうには
絹織物のひだのような雲…。
雲も春の装いか。

2012/03/06 (Tue)

[37] 折れたアネモネ
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何度も雪をかぶり
すっぽり雪に埋もれもし
それでもしゃんと背筋を
伸ばしていたアネモネが
春を目の前に
風で折れてしまった。
添え木に寄りかからせていたが
今朝見ると
後から咲いたアネモネに
折れた体を預け
頬を寄せあいながら咲いていた。
互いが互いを愛しむように…。
今この時を愛しむように…。

2012/03/05 (Mon)

[36] 春の目覚め
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今朝見た夢は

誰かを探している夢。

学校らしきところで

その人のことを聞きながら探し回る。

その誰かがわかりそうな

ところで目が覚める。

懐かしい余韻が一日中続く。

脳の奥深くに眠っていた

遠い思い出までも目を覚ます春。

窓をたたく雨は

もう冬の雨ではなく

一雨ごとに春が目覚める。

2012/03/04 (Sun)

[35] 空へ
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荒れた天気が収まり
春を探しに庭に出る。
風は冷たいけれど日が差して
庭の向こうの川面が輝く
ゆらゆらと…。
ミモザのそばには
ヒヤシンスの緑の蕾、
バラも芽吹き、
ローズマリーの根元には
福寿草の金色の蕾。
なんだかわからない
お楽しみの小さな芽吹きも…。
本当に久しぶりの良い天気。
でも、きっと晴れると思ってた。
あなたが空に還る日だから…。

2012/03/03 (Sat)

[34] 悲しみ
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受話器をおろして

外を見るといつもの海。

思いのほか青く

涙に潤んだようなその色に

海の悲しみを知る。

夜からはしとしと雨が降り出し

朝には風も加わり

ゴーゴーという音に起こされる。

海も空も風も

悲しんでいるのだろう。

山は閉じこもり姿を見せない。

けれど明日には落ち着き

寄る辺なき人々の悲しみを

受け止めてくれるのだろう。

あなたが逝って

寄る辺を失った私たちの悲しみを。

合掌。

2012/03/02 (Fri)

[33] 楽しいクスリ
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茶碗を洗いながら

たわいもないことを

思い出して“クスリ”。

本当にたわいもないことだけれど

なんだかおかしくて

“クスリ”。

“クスリ”の余韻で

しばし楽しい気持ちに。

思い出し笑いの“クスリ”は

楽しい薬。

2012/03/01 (Thu)

[32] 願い橋
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目をつむって渡ったら

願い事が叶うという「願い橋」。

三人で訪れたとき

一人が渡りたいという。

幅もそれほど広くなく

手すりもない。

それでも目をつむって

渡りたいという。

ある願い事のために。

じゃあとその人を真ん中に

三人で手をつないで渡る。

水の音を聞きながら…

手の温もりを感じながら…。

渡り切ってその人は

「こんなふうに人に助けられて

願いは叶うものかも」とぽつり。

その言葉が

雲南の山々に斐伊川に

そして、心にこだます。

目をつむって渡ったら

願い事が叶うという「願い橋」。

どうぞ、願いが叶いますように…。

*願い事が叶うというのは映画『うん、何?』の中で登場。

2012/02/29 (Wed)

[31] 胸の中のみどりご
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地震があって

原発事故があって

それぞれの中で芽生えた

小さな思いが

一年(ひととせ)を経て

葉を広げ始めた。

わらしべを撚るように

互いの思いを結び

見えないけれど

確かなものとなって…。

未だ葉は小さいけれど

新たな兆しを刻んで…。

胸の中だけを住処とする

そのみどりごを大切に育てよ。

2012/02/28 (Tue)
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