ほったらかしにしていた小ぶりのトマトが3つ。サラダに入れようとトンと包丁を入れる。酸味を帯びた青くさい匂いが広がりミルク色の霧のように懐かしさが立ち込める。去りゆく夏が懐かしいのかそれとも遠い日に畑でもいで食べた思い出か…。夏休みに出会った友にさようならを言う日のような、しまって忘れていた子どもの頃の宝物のような、トマトの匂い…。
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