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中村真生子の部屋


[282] 昔、カモメは…
詩人:中村真生子 [投票][編集]


ピアノやヴァイオリンなどの音を聴きながら

音符はいつも思っていた。

自分も音のように

軽やかに空(くう)を舞いたいと。

そこで音符は神様にお願いした。

「私は生まれてこの方

紙にはり付けられたまま

どこへも行くことができません。

どうぞ私も音のように

空を舞えるようにしてください」と。

音符の切なる願いに

神様はそれもよかろうと

音符に灰色の羽をつけてやった。

すると音符は

ゆらゆらと楽譜から飛び立った。

それが全音符だったので

白い体に灰色の羽の鳥になり

その鳥を

人々はカモメと呼んだ。

だからカモメは

ゆらゆらと舞うように空を飛ぶ。

まるで昔暮らした五線譜を懐かしむように…。


2012/11/14 (Wed)

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