床に木々の影が揺れている。ざわざわと…。その中で思いを馳せる。何千もの昔「時」が発見されたころを。最初はこのようなざわめきだったのかもしれないと。その意味を確かめたくて人は大地に棒を立てたのかもしれないと。そして日時計が生まれ、やがて機械の時計が生まれた。過去も未来も人々の生活も整然と照らしてくれるようになった「時」は光ではなく影から始まったのだ。床に木の影に混じって自分の影が映っている。
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