かつて扉をたたいた時扉は固く閉ざされていた。再度、扉をたたいた時扉は少しだけ開いた。けれどすぐに閉ざされた。三度、扉をたたいた時扉は中に入れるだけ開いた。そして一歩踏み入れた。目が慣れてきて映し出されたのは見覚えのある風景だった。どの扉もどの壁も…。今度はうちからたたくのだ。たくさんの扉を開けて光と風を入れ自分から自由になるために…。
[前頁] [中村真生子の部屋] [次頁]