| 詩人:梅宮 蛍 | [投票][編集] |
両足を突っ張って
凛と立ち
報われない世界を睨みつける
君が好きだった
自己犠牲を美徳にしない
そんな君が
両足で踏ん張って
背を伸ばし
押し寄せる波に抗う
姿が好きだった
どうにもならい と
嘆く声を
無視したい君は
だけど結局気になって
気がつくと
いつも走り回ってた
誰かのために
アディオス ヒーロー
もう休んでもいい
今度は君が救われる番
アディオス ヒーロー
疲れただろう?
さあ ここらで一息つこう
アディオス ヒーロー
もう休んでもいい
今度は僕が救う番
アディオス ヒーロー
疲れただろう?
今度は僕が君を救う番
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雪が降る
風が吹く
頬を突き刺す冷たさは
耳まで赤く染め上げて
雪が降る
風が止む
雪片がふうわり
目の前を ほら
雪が止む
星が出る
あら この匂い
そうね 今日は鍋にしよう
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窓の向こうにカラタチの枝が揺れている
葉は茶色く痩せて
ほうぼう禿げていて
「きっとあの木はもう実をつけないね」
母が何気なくこぼした声が
寂しそうで
萎んで皺が寄った手が
どうしてか 鮮烈に見えて
ふと視線を移すと
カラタチの向こうに空が広がっていた
青い 青い空が
遥か彼方へ 広がっていた
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――流転する
しじまは喧騒に
――流転する
平和ボケした連中が徴兵されていく
――流転する
騒乱は沈黙へ
――流転する
闘争は制圧された
――流転する
未来は過去を
――流転する
学ばざりしは阿呆の所業
――流転する
所詮この世は馬鹿ばかり
――流転する
私もあなたも皆馬鹿
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さながらそれは大樹のようで
あるいはそれは昆虫の抜け落ちた羽根のようで
ぼくらはきっと 同じところをぐるぐると
ぐるぐると めぐっている
循環
水も大気も生命も
流れて消えて また生まれる
誰かの手の中で
きっとめぐらされて 生きている
根が水を吸って葉が拡散する
取り残された羽は大地に埋もれて誰かの羽になる
めぐる
それを君は何と呼ぶ
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雪 しんしんと
積もりて何を秘すべきか
赤紫の指先
吐きかける白
街灯の下 舞う
塵の如く
帰り待つ母
犬の遠吠え
雪 降り止まず
星 絶えて久しく
月は何も見ず
息子 帰らず
今日も帰らず
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閑かな夜だった
詐欺師が一人やってきて
僕のお腹を裂いてしまった
痛みに向かうトンネルは
とても長くて光も無い
四方から聞こえる低い唸りは
反響しあって頭蓋を埋める
詐欺師の姿はとうに無く
穏やかな夜は壊れてしまった
トンネルの外には朝がある
痛みに満ちた陽の光
それでも僕は
夜の中にいたかった
いたかったんだ
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爬虫類を飼っています
雌のヒョウモントカゲモドキです
名前をレオと言います
洋名のレオパードゲッコーから採りました
彼女は時折卵を産みます
無精卵です
放っておくとカビるので
私はそれを生ゴミに出します
ゴミに出した卵はとても臭いです
きっと栄養価が高いのでしょう
だから私は早々に
三角ネットごと紙袋にくるんで
他の燃えるゴミとともに
集積所へと持っていきます
爬虫類の卵は 食べられません
無精卵なので 孵化もしません
卵を産んだ彼女は
いつもとても痩せてしまいます
私は甲斐甲斐しく餌を与えます
丸々と太った彼女は
また卵を産みます
そうしてひと月かけて4つほど
産み落とすまで
私と彼女のルーティンは続きます
排卵は
いつの時代の
どんな種族にとっても
命懸けです
そこには生命の神秘と苦しみが
つきまとうのです
卵管に卵を詰まらせ
死ぬ個体もあると聞きます
だけど
ああ だけど
私はソレを生ゴミに出します
彼女の命がけの産物を
食べられないので
臭いので
カビるので
簡単に生ゴミにしてしまうのです
いとも簡単に
そうして今日もふたつ
捨てました
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上の瞼が下の瞼と睦み合う時
脳は一人寂しく空想に耽っている
耳朶に届く虫の声
秋にはまだ早いと思っていたのに
いつのまに ほら
不思議な国の話をしよう
入眠と覚醒の狭間で見られる
あの世界の話を
神経の鎖から解き放たれて
小さな羽を生やして
金属の擦れ合う音を響かせながら
脳はコチラとアチラの境界を越えていく
見覚えのある見知らぬ街で
たくさんの登場人物たちが
誰とも視線を合わせず会話をしている
一方通行コミュニケーション
その重なりで
あの世界はできている
今はコチラがアチラで
アチラがコチラ
そのうちに
脳はジリジリと痩せ細り
羽根も次第に薄くなり
触覚がニョキニョキと飛び出して
キミは蝶になる
蝶が見た夢
夢が見た蝶
上の瞼と下の瞼の
長い長い性交は
何も産まずに終わるけど
頭の中には蝶が一匹
蛹になって眠っている