詩人:梅宮 蛍 | [投票][編集] |
やぁ、と言えば
応、と応え
そこに何のあるべきか
然りとて君は夢の飛礫
明日は帰らじ郷の粒
GO!と吼えれば
さぁ?と躱し
そこに雫の見るべきか
去れどもあなた
そこはダメだよ
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虫の音と風が部屋に滑り入る
ベッドに横になったまま見上げた窓の向こう
下弦の月が逆しまに居る
今日も何もなかった
明日もきっと何もない
満ちず欠けず 歳だけが過ぎる
そんな日々もそう悪くはない
風は幾分涼しくなった
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鉄の匂いがする夢の中で
私は途方に暮れています
黒一色の場所に立ち
右も左も分からずに
前も後ろも分からずに
辛うじて
足の裏の硬い地によって
上下がわかるだけなのです
虫の羽音がこだまして
ここは狭くない場所なのだと知ります
なまあたたかい臭気によって
異様な光景が脳裏に浮かびますが
何も見えないので
何も分かりません
鉄の匂いがする夢の中で
そういった次第で
私は途方に暮れているのです
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じょんがらの
音が夜の雪片に跳ねてこの耳に届くとき
その手はもう
次の音を弾いてゐる
寒空の月
何を観る その眼で
誰を弾く その指で
知らない香りが鼻腔に迷い込んで
出て往く宛もなく
ずっと私の中に残るのだ
残ってゐるのだ
憎い人
だけど 愛しい音
だから
知らないふりをしてあげる
嗚呼
なんて なんて莫迦な夫(ひと)だろう
でも ほら
じょんがらの 音が 綺麗だから
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並列した文字に押し潰されて 私は海を漕ぐ
浮かぶ月 あれは夜の塗り忘れ
はたまた あれはピンホール
あの穴の向こうには
きっと小舟が一艘 波間に止まっていて
それが今 私として 焼き付けられているのかもしれない
上も 下も 白いも 黒いも
なにもかもが反転した世界で
誰かが今 生きているのかもしれない
その人は 何を思って私を撮影しているのだろう
きっと やはり
何かに押し潰されて ふらり 思い立ったのだろう
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川面に昼の星が千と輝く
対岸に踊る緑は濃く
その向こうの涼しげな薄闇が好奇心を駆り立てる
灰色の礫が滑らかに微笑み
何事もないよと時が過ぎ往く
一枚の写真のような
その景色
子は静かに溺れている