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えるきゅーの部屋


[7] きみに読む物語1
詩人:えるきゅー [投票][編集]

薄暗い部屋の中
目を合わせずきみは言った

「失礼します」

そんな出会い
目も合わせず一言二言喋って、はいさよなら
そんな出会い

きっかけは偶然、再会も気まぐれ

出会った時とはうって変わって穏やかな笑顔、落ち着いた雰囲気。
僕の目をまっすぐ見つめるきみに心が揺れた

物静かなきみの声が聞きたくて
柄にもなく、一生懸命話を振ってみたり

あまり感情を表に出さないきみの笑顔が見たくって
無理して冗談なんか言ってみたり

見るからにちっぽけな、こんな僕にもきみは笑顔を見せて、こんな僕の手を握ってくれた

そんなささいなやりとりが嬉しくて・・・

それで良かった。ただそれだけで。

これでも多少の知識はあるし多少の経験もして来ているんだ。
これ以上は迷惑なだけ 多くは望まないさ

そんなちょっと背伸びした、無理して気持ちを抑えてる子どもみたいな僕を見てきみは手を差し伸べてくれたよね

そこからは多分きみと同じ
気になって声聴きたくて逢いたくて

戸惑ってばかりの僕の手を、やさしく握って離さないでいてくれて・・・

きみが傍にいるだけで在るもの全てが変わった

山積みになりすぎて目を逸らしてきた問題も
きみとなら少しずつ確実に

嫌いだった自分の声もきみが好きと言ったから

見る度にうんざりしてきた騒がしい外の世界ですらも
きみが傍にいるだけで好きになれた。

こんなことは初めてだった
生まれて初めて素直にそう思った


今思えばね、浮かれてたんだと思う。
経験したことのないことばかりで嬉しくて、はしゃぎたくて。
暗闇から引っ張り出してくれたきみに少しでもこの喜びを伝えたくて出た言葉

それがあのセリフ


無口な僕
いままで何度も誤解された
いままで何度も理解されなかった
きみとはそうなりたくない、だから照れずに怯えずに素直に伝えたかった・・・



経験不足だったね。
浮かれるよりも早く、はしゃぐよりも先に
現状を理解して少しでもきみの立場になって考えれば良かったよ

悔しかった
認めて欲しかった生まれて初めてのこの気持ちを

ただそれだけ

そんなくだらない気持ち一つで歯車壊れて空回り


あっけなかったなぁ・・・

2009/01/17 (Sat)

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