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人魚日和の部屋


[10] ちゅん、ちゅん。
詩人:人魚日和 [投票][得票][編集]

ちゅん。


ある晴れた綺麗過ぎる空の真下

私は小さな命に出会いました


「どうか御存じならばお教えくださいませ」

「私に答えられる範囲なら喜んで」

「子供を捜しておりますの。もう3つになりますわ。ちゅん、ちゅんと可愛い声で鳴きますの」

「左様ですか、申し訳ありません、そのような声は存じておりませぬ故」

「ご好意感謝致します」

親雀ちゅん。

また何処へか、捜しに行くのか。

もうこれで四度目の会話。

貴女は知っているのでしょうか。

もう一ヵ月も前、こんな綺麗な空の真下。

私がコンクリートの上の真っ赤な小さな子雀を拾ったことを

「可哀想に」

両手ですくって家まで連れて行き

絶えた命を埋葬したことを

毎日花を添えて両手を合わせていることを

知っているのか知らないのか

黙り続ける私を許してください

信じられないのか狂乱したのか

何度も何故か訊きにくる。

私だけに


ある雨の夕方、傘をさして歩いていた私が目にした。

真っ赤な雀、親雀。

「可哀想に」

何故だろう、子供と同じ場所で。

傘を閉じて、両手ですくって家まで連れて行った。

優しい雨、知ってか知らずか強くなる。

子雀のすぐ横に埋葬し、2人の上に傘を置いた。

綺麗な空の真下、親子が再び再会できることを祈って。

髪と頬を濡らし、私はただ祈り続けた。

2007/04/02 (Mon)

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