詩人:善田 真琴 | [投票][編集] |
見え乍ら敢へて見ざる様に自ら目を閉ざし歩き続くれば、いづれは転ぶらむ。転ぶ危ふさ知りつつ、それに賭くるは博打さながら、手持ちの金子少なく切羽詰まれば、余裕失ひて巻き上げらるるは必定。目的のため過程を顧みざれば、例え手中に収めれども自ら満足するを得ず、臍をかむは火を見るより明らかなり。
然りとて、放置すれば、滝壺に落つる小舟、乗れる当人は目瞑りて寧ろ楽しげなれば、座視するほど縁は浅からじと言へど、血分けたる同胞にてもあらず、当人の本意ならざる事を無理無体に強いる権限もなし。妬み嫉みと人の謗りは恐るるに足らざれど、万一全て御破算にて終はりし後、「故にあの時、止めたりけるを」としたり顔するも醜し。ましてや背中押す気も起こらず。然ても「虞や、虞や。汝を如何せむ」と嘆きし諸葛亮の如き心境なりきとて。
床の間の
虚ろなりせば
慰みに
活けし梔子
はや褪せにけむ
【歌意】
床の間に何も飾りがなく寂しいので、くちなしの花を活けた。その口無しではないが、何も語らぬまま、その色は既に褪せてしまったのだろうか。
【脚注】
「梔子」と「口無し」は掛詞
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太古より人は安心立命にほど遠く、小さきは細菌より始めて蟻・蚊・蛭などを経て、大なるは肉食の獣に至るまで、人の命は常に外敵に狙われ、更に天変地異の天然にも時に害され、人は風前の灯火の如く長き時代を生き抜きて来たれり。我等は弱き故に文明の利器に守られ、危険減りにし今も、潜在する恐れの胸の内に巣食ひて残り居れば、常に落ち着かぬ心地去らぬなり。今日あるものは、必ず明日もあるとは限らざれど、世の中に哀しみ溢るる許りなれば、人は希みを虹の如き明日に結ばむとすらむ。
憂き世には
哀しみ底に
流れ行く
飛鳥川には
何を浮かべむ
(詠み人知らず)
【歌意】
憂鬱ばかりの世の中で、浮き上がれない哀しみばかりが底に淀み流されてゆく。明日に希望を繋ぐとしても飛鳥川に哀しみ以外の何を浮かべればいいのだろう。
【脚注】
「憂き」と「浮き」、「飛鳥」と「明日」が掛かる。
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作品「春霞」より
花咲くや
月夜に映る
面影に
慣れぬ言の葉
降らせば心中
流れずの
心を小袖に
隠しては
漂う雲に
熱帯びる紅
花弁を
一息吹けば
残り香の
夢現の様な
面影になる
原詩/枝豆さん
編歌/不肖善田
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作品「銃声」より
腐敗して
爪の先から
溶けてゆく
喉詰まらせて
示せぬ合図
泣く腕と
問う両の目と
掻きむしる
首見渡せぬ
暗示の糸は
震える手
憎悪の念が
束になる
祈りの形
悲しみの果て
原詩/枝豆さん
編歌/不肖善田
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作品「盲目」より
喉掠め
滴る微熱
その指が
残した記憶
肌に刻んで
抉るよな
幸福に似た
縁取りと
焼け付く笑みで
どうぞ殺して
止まぬ愛
君の脳裏に
溺れたい
朽ちない痕を
残し続けて
原詩/枝豆さん
編歌/不肖善田
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作品「フィナーレ」より
微睡みの
擦り切れた夢が
雲のよう
あてどないから
壊してあげる
光り射す
わたしの箱庭
煌めいて
始まる日々へ
抜け出した愛
あなたにも
伝えてあげる
鮮やかな
色の風船
空に放して
原詩/枝豆さん
編歌/不肖善田
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作品「純潔の必要」より
君と僕
引き込まれたのは
罠か穴か
君の知らない
いびつな曲線
赤い意図
幼い仕掛けで
僕を縛る
解ける紐なら
逃げているはず
唇で
ふさぐ感触
抗って
逃げてもいいよ
帰さないけど
めちゃくちゃに
壊してみよう
恋心
溺れたルージュに
沸き上がる愛
原詩/枝豆さん
編歌/不肖善田
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去る人も
見送る人も
想い出を
胸にパレット
拡げては描く
振り向かない
背中に向けて
お辞儀した
春はそこまで
見渡した空
泣いたこと
笑ったことも
7色に
溶かした虹を
明日へ架ける