詩人:善田 真琴 | [投票][得票][編集] |
江戸にて四つばかりなる女児、高層集合住宅八階の手摺りより過ちて墜落するも、顎に擦過傷負ふのみにて命に別状無かりし由。母君の束の間目を離せし隙に女児の姿なかりければ、慌てて下を見渡すに、我が娘の泣きつつ歩き居るを見付けたり。取るものも取り敢えず下に駆け降りて問ひ聞けば、ただ「落ちにけり」と泣く泣く語るばかりなり。
九死に一生を得て命助かりしは、落ちにける中途にて木の枝々に当たりて、力削げ弱まりたるが幸いしたるにやとぞ。親は如何ばかり肝を冷やし、また安堵致したる事にや。親子と云へば、片身に虐待し更に殺害と辛く暗き事ばかり多き世に、久方ぶりに聞く心嬉しき話にこそとて。
思はざる
禍さへも
福となし
いよよ深まる
親子の絆