詩人:旅人の歌 | [投票][編集] |
君の住む故郷ではもう季節が海峡をゆらゆら渡り始める頃
僕は都会の電車の中でふと君の懐かしい横顔思いだせなかった。
ドアにもたれ人と人との間で踏みつけるのは自分の影ばかり
赤い文字のスポーツ新聞の向こう側で誰か ため息をついた
もうそろそろ帰ろうと帰らなくちゃいけないと
思いはじめていたんだ
改札口抜けた処で立ち止まっている僕に
だれも気づかない そんな街角
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都会の暮らしは鮮やかな色どり
華やかな寂しさと夢によく似た嘘と
そんなもので出来ている おかしいほどに
哀しみが穏やかに扉を叩いて
ああ いつの間に私の友達なる
知らず知らずのうちに自分が変わってゆく
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もう、これまでねと君はうつむいて左の頬だけでひっそり笑った
北口改札を子ジカのように鮮やかにすり抜けて出ていった
せめてもの別れに一度だけ振り向いてくれたのに、ちょうど今着いた修学旅行の制服たちが君をかき消して最後の声さえ食べてしまう。
長いエスカレータ上って下りてやっとの思いで出した答え
始める前から終る旅もある。やはり野におけれんげ草
せめてものはなむけに一度だけ手を振ってみせた 後ろ姿をつつむ紙吹雪 それは僕のふるさとゆきの
季節はずれの指定券
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君に初めて口付けたのは
夏の手前の俄雨の後
草のにおい運ぶ風と
明日から来る夏休みの校舎
どこか遠くで梅雨の終りの雷の音が聞こえた気がして
耳をすませば
君と僕の胸の駆動それとも全て夢
きらめく一瞬のときめきを残して
君はきまぐれな風のように不意に消え去り僕は初めての秘密を抱いて一人立ち尽くしていた秋君の名前を胸の奥でつぶやいたときこみあげる想いに涙溢れて秘密は永遠に閉じた