詩人:桃鈴 | [投票][編集] |
〜taboo,最後の涙〜
携えた思い出が少なければ少ないほど
歩んだ道のりが刹那な程,
再び相目見える瞬間を望む念は強く
忍ぶことさえ忘れる熱情に
それでも離れること出来ない
失う事慣れ親しんだ暮らしの中で
初めて異を唱えた
“失くしたくない”と
幾重にも重なって行く現実を
遠い日々が支配する
一度きり,唯一度きり
肩を並べて歩んだことがあった
袖の擦り合う音に自然呼吸を失い
何時までたっても苦しかった
触れ合う事の許されぬ運命(サダメ)に
何故これ程までに捕らわれるのか
強い力で引き留めようにも
未熟故に周りに阻まれ
“幾年か後にでも
再び相目見える事を願って”
あなたは去った
愛しい人よ“心さえ通っていれば”,
そんな理屈を時代が許さなかった
互いに育ちし環境の差が許さなかった
愛しい人よそれでも我が身は
間接的にでも
あなたを支える道を選び
例えばそれが今の世で
咎められるべき道であっても
悔やまない
寧ろ喜んでその罪に身を投じるだろう
引き離された瞬間から
“再び相目見える”事はないと知っていても
あの日,空は青くて
あなたに逢えるまで笑っていようと決めた
あなたは
何時もと違わぬ笑顔で
最後に一滴(ヒトシズク)堪えきれぬ
涙を誘い,
離れゆくその瞳に
気付かれることの無いよう
滴を拭わず笑みを湛えた