詩人:緋文字 | [投票][編集] |
既にその名で在ったから、
そんな理由でよいから
呼んでみよう
時だけ過ぎては
負荷として掛かるのを
払わなければ
開くこともないと
黒い蓋にさし置いてきた
あの鍵を取りに行こう
引き起こした一枚
握った手の中に残った
薄くなるばかりの文字
貴方より更に赤い顔で
3人分のサンデーを
食べ続けた寒い午後
中から見た外
あまりにも空風が葉を落としていくのを見ながら
理屈の解らない私には
それさえ理由に思えた程で
枯葉持ち帰り
燃される者があるなど
気付きもせず
千代紙人形然と仕立てられ
さも相応しげに一度きり
零したものも
ただの、口惜しさ
他所様の目とは何とも便利
近くにあろうが
遠くにあろうが
観たいままに視てくれて
自らを歪め続ける者にさえ
認めようとする者は在り
傍ら遮二無二生きている
或る朝、玄関先に置かれた
ヘラの跡ある精巧な雪塊
あれが夢だったような気がしてならなかったけれど
今でも繰り返し映るようで
あれが在った、という気がしてならないのだけれど
これもまた少しでも、と
私が歪めてしまっただけかもしれないけれど
呼んでみよう、
傍ら喜ぶ者あるなら
そんな理由でよいから
然し
僅かの親しみ含まず響き
届いてしまったら、
懸念が消えず
臆して喉元に残す
もう一度開いて手を置く為に、鍵を取りに行きました
機嫌よく聴いていた
貴方の顔を思い出したから
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何通りかの鎮め方は得た
沈みきることなく
浴槽は浅い
ひとりに休まり
うってつけだと
この場所を選ぶ
込み上げた熱は声にせず
上回る温度へと奪わせ流す
栓を抜き 何もない
吸い込まれる
幾筋かの黒を見届ける
いつもの呼吸で後にする
それでも 気を抜けば
決まった時刻に繰る
躰が冷えきるまで
眠らないのは
逸らさぬ事で
見えると信じた延長
楽にして、
安まる声に誘われて
冷えた足先浸けるのを
躊躇わないほどの
温い湯
こわばる躰
頭と背を胸にあずけ
ただ手の平で かけられる
湯の鳴らす
音を聞く
時折り触れる手は
欲を含まない
母のようで心地よい
何も交わさず
両手で掬ってみた
重みもあって温かく
透明でいて透明でない
自然と緩まり 解いた身
それを見守る 眼の中で
湯が返す
音だけを聴き
赤子の様な気分になれる
私の掬う 私の色の
内に包んだ 熱の行方で
せめて届くもの 温められたなら
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重い、
カラカラ
パタパタ
せわしない音
続けば何時しか
それも子守唄に
こういうものには
いくらでも応じた
此処が何処だか
気付かせたのは
誰の許で行われたのか
あろうことかの談笑
ずっと遠くの方から
聞こえていると思っていた
それはほんの直ぐ足元で
うとましい
申し訳程度の
薄い肌布団
通して伝わった
おそらく膝の辺り
無造作に無遠慮に
置かれた
何か
また
掠れ声 ひとつ あげ
掻けない眉根
よせたところで
誰かの
一際高くなった笑い声で
誰にも
気付かれない
目交ぜの覚えなく
視線は天井に固定
スッと入ってくるなり
見過ごされたそれを取りあげ
詫びるような笑み寄越し
椅子に腰掛けた人の手にあったのは
団扇だった
感じる重さなんて
勝手なものかな
きっと
その時だから感じた
たぶん
どうでもいい 重さだった
詫びる必要などない
なのに
間に合わなくてゴメンって 顔だった
でも、だから
その人を尊べて
後日また
テーブルの上にでも置くように
誰かがポンと忘れた雑誌
それには
重さは感じなかった
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なんとなく
歩いて帰りたい日がある
気持ちよく晴れた一日が
作り出せないモーブで終わろうとする時だったり
ヘッドライトが照らす
一斉に転がり滑る乾いた雪を見た時だったり
今夜は傘が要るか要らないかの小雨模様
途中少し足を止め
閉じた瞼へ湿気を含んだ冷たい空気をあてて
ゆっくりと目を開ける
どこかの家の常緑低木
夏隣に食べる為の黄色い果実を
早熟に成らせていて
あのコが一緒なら
突然もぎ取り
私に手渡しそうな気がした
どうしているだろな
気をとられ
ブーツの踵が高すぎた事を思い出し
心配すると心配するかもしれないから
考えるのはやめようと思った
彼女はスルドイ
街灯が
濡れた流線型の金属へ
塗装の上からも
ぬめりを帯びた 色と光りを与えている
先程エンジンが切られたのか
その下には二匹のまだ若そうな猫
あの場所で
後どれくらいの暖をとれるのだろう
今夜はそこに落ち着くのか
また求めて移るのか
疲れて眠るまで
思い巡らすうちに
家に着き
鍵を探り 取り出す
どこだったろう
今日、失ったように感じた自分の一部
少しは取り戻せたような気分で ドアを閉める
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派手な音を立てた
とても気に入りだったから
そう、割ったのは故意だった
もう行けない場所でしか
手に入らないと聞いていて
復元不可能
ただの破片になった
棄ててしまうには
一片一片 面を増し
輝きつぶさに魅せつける
捨てきれないこと
手にした時から暗示した
棚の上に残されている
蔦模様キレイな化粧箱
いつかこの破片で
細工施しテーブル造り
あなたと一緒にお茶でも飲もうか
掻き集めて箱の中
埃を掃えば
どこか装飾過美な箱
鮮やかに映り
触れない限りの
それは元通りを粧う
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しかたない
しかたない
忌み嫌って過ごした言葉
しかたない
仕方ない
遣わないよう努めた言葉
ひとりひとりそれぞれに
取り合う手は持っていて
同じ場所には立てなくて
そして今
遣ってしまう
仕方が無い
布団に顔を押し付けて
気持ちも一緒に押し付けていた
あのチビの方がもっと残酷
そこにも愛は
あったというのに
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一瞬の重なりも
永遠に変える事ができた
伝える必要がないのは
あなたがもう
それを知っているから
感じ取れないような
そんな人なら
私は最初から愛さなかった
何度も最後の愛を始めるほど
尊いものを愚弄するつもりはないから
一度だけでも出逢えたら
それは私の中の誇り
誇らしく思う私を
あなたもきっと
誇らしく思ってくれるでしょう
そして互いに自分が少し
価値のある人間になれたと
生きていく自信に繋がるのでしょう
『神様の悪戯なのですよ』
存在する者のみしか信じないから
悪戯をされるというのでしょうかね
そんなものに付き合う暇がないと振る舞うから
その存在を見せつけにくるとでもいうのでしょうかね
それでもちっとも構わないのは
あなたをそれ以上に
崇めている私がいるからでしょうね
永遠の愛を持つ者は
自分の中に棲まう
瞬きながら消えない時を
知っている
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一本の木だけが
垣根の前に立つ
あの場所を
知らせておこう
或る人が持っていた
その中の一つ
断りをいれておこう
許してもらえるよう
貴方が触れること
赦してくれるだろう
感興催すほどではないから
見落とさないよう
伝えた通りに
そうその意気を以て
きちんと歩いて
其処まで 来て
見えてきたら
近付く前の一呼吸
想い出して
一切のものから断つ様に
纏ったものも少しの間
脱ぎ捨てて みて
生まれた月にまた生まれ
分かち合えたりした時から
移り変わりゆく時は
恵みの雨にもなって
雨ざらし 惨めとは
繋がらなくなって
いつまでも
凍みたままの気分 思い上がりの
靴下を履いた少女も消えた
次に落とす予定のもので
成らせた実
あまり沢山の実はつけれないから
一つ限りにしておいて
渡すあてがある、
其の人も言っていた
親指の爪 届く前から
包むその香りは
よく眠れる と
貴方が言った 私の匂い
現れた果肉は
目眩がした と
おどけてくれた 私の姿
口に含んだら
あの時の様に
味わい 尽くして
毎年必ず 実をつけるけど
そう沢山は実らないから
毎年 ひとつ
食べに 来て
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足りない 足りない
言っていれば
不公平なくらい
その先は拡がるみたいだった
小さいものから拾い集めて
やっとのこと
いっぱい満たしたそれを見て
その手から叩き落とす奴というのは
確かにいるのだと思った
全部落としてしまったじゃないの
私は持っている
まだ持っている
そして 優しさに
他者から言い換えられただけの傲慢に
否定しながら安堵する
それを知る自分を罵りながら
それでもまた
安息の半日を過ごす
満ち足りた中
奥の奥の
髄の私が
足りないと渇望するからこうやって
まだ在る事ができるのだろう
あなたはもう戻らない
許してきたのではなく
その実 諦め続けてきた
私はまだ ここにいるというのに
あの人の傍で
不公平な話
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心あるものが
心ないことをいう
心ないものが
心あることをいう
心ない者が
心ある様なことを言う
心ある者が
心ない振りをして言う
それとの違い
気付かずに
気付けずに
気付いていたよ、と
言い切れるほど
私は届け 返せていますか
そうであれ、と
願うのではなく
深く伸びてきた腕
掴んで放さず
いてくれるのは
反射で除けてしまわぬよう
静かに
あの時 触れられたおかげ
繋がる助詞ひとつにも
気持ちの丈は表れて
繋げる意味は
探らずとも
探る相手の解答合わせ
探る間は
仮定でしかない過程に
正解を出すのは誰で
その役目
押し付けたい相手は誰で
その言葉
そこに置いてくれた意味
絶えず考え
ずっと持ち続けて
繋げる意味は意識下に潜み
そうであれ、と
思うだけでは
足りる活路は見出だせないから
今日も明日も
一寸二寸と
繋がるための尺に繋げて