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凜一の部屋


[255] ヒトリヨガリ
詩人:凜一 [投票][得票][編集]

神様どうか
僕を大人にしないで


自分を他人として見ることが
大人になるという事なら
僕はヒトリヨガリのままでいい



僕の背丈が
今より30センチ低かった頃
未来は
果てしない空そのものだった


昨日と今日と明日には
それぞれ違う僕が居て

裸足で確かめた土の感触
残るのは
僕だけの足跡だった



けれども今は
振り返ってみても
どれが自分の足跡かなんて
わからなくて

みんなと同じ革靴で
みんなと同じ靴音を鳴らし
踏みしめるのは硬質なコンクリートだ


未だ見ぬ明日や明後日に句読点を打って

出会う人すべて
自分さえも
カテゴライズして


未来は満員電車の中に納まっている


昨日も今日も明日も
同じ僕が居る


いつから「楽しい」が「くだらない」に変わったんだろう


たった30センチ上空から
未来も世界の端っこも見えてしまうなんて
気付いた頃にはもう遅くて

僕はきっと明日も明後日も
満員電車でため息をつくのだろう

みんなと同じ
革靴をすり減らして



神様どうか
僕を大人にしないで


あの果てしない空の下
ヒトリヨガリで居たかった

2006/07/31 (Mon)

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