詩人:柚 | [投票][得票][編集] |
そこには白い一羽の鳥がいた
まだ幼く 純粋なその瞳は
あの遠く蒼い空を映していた
求めるように鳴く声は切なくて
僕はなんだか泣きたくなった
そんな鳥を
たくさんの人が何も知らずに
傷つけた
ナイフのような言葉で
踏みつけるように
僕はそれを見つめてて
どうにもできなくて
周りのすべてが影のようになって
僕と鳥だけが色濃く世界にあった
人のざわめきがうるさい
僕は
思わず逃げ出した
無数の傷の鳥を見捨てて
ある朝
僕は白い鳥の元へ行った
後悔の思いに押されて
鳥のようにいつもより白い朝
鳥が居た場所には
一つのボロボロになった箱があった
その中に
あの白い鳥がいた
傷つけられボロボロになり
羽をもがれて
なお
その瞳は蒼い空を映していた
零れた涙は輝き
土に染み込んでいった
切ない声は僕らだけの世界に響き
白い鳥は
優しい顔をして
最期まで空を見つめ続けた
僕はその様子を
胸に抱くことしか叶わなかった
世界がまるで僕らしかいないような気さえして
もう
風の音さえ聞こえないほど
静かだった