詩人:謳器 | [投票][編集] |
そんなふうに他愛もない話をしながら
君がほんとは何を伝えたいのか
気付いてない訳じゃないけれど
今日は何も言わずに
傍で聞いてるだけでいいかな
ねぇ…
ほんとの気持ちを
見せるのが怖いから
そうやって何気ない言葉を連ねてるんでしょう
君の大切な想いを
他の誰にも拒絶されたくはないから
そうやって独り言を呟いてるんでしょう
そこではずっと雨が降っていたんだね
明日からは晴れるといいのにね
あぁ
何もかもを受け入れる力が欲しい
君の全てを
包み込めるような
さぁ、もう家に帰ろう
そして一緒に眠ろうよ
明日のために
明日からのために
これからも歩いて行けるように
ずっと一緒に歩いて行けるように
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心を奪ったこの世界に
もはや何も求めるものはないと
遠のいた何かを見つめる君の眼差しは強く美しかった
そして
再び心を得た君は弱くなっってしまったけれど
その微笑みは何よりもはかなく、きれい
そう、退屈なこの世界に真実は積もり続ける
そう、この音も無く降り積もる灰のような真実こそが君の真実
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「君の存在が僕の支えなんだ
僕が君の支えになってあげようと思っていたのに」
あなたが弱さも隠さず
そんなこと言って苦笑いを見せるから
また愚かにも望んでしまう
この世界に絶対なんて無いと
思っていたのに
ほらもう
あなたを必要としている
あなたを失う事だけがひたすら怖い
弱くて、孤独で
頑ななこの心
壊れてしまいそうな
この心
だから
精一杯の勇気であなたに返した言葉は
こんなに単純
「ずっと一緒にいてほしい。」
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雄鶏の叫び声とともに
その夜は明けたけど
夜明けまで降り続けた雨は
哀しい記憶を冷たくその身に刻んだようだ
あの日の雨は止んだものと思っていたのに
今も心の隙間に
降り続けていたんだね
「大丈夫、大丈夫…」と
何度も何度も繰り返し耳元で
囁くけれど
「大丈夫、大丈夫…」と
どうすればいいのかわからないまま
抱きしめるけれど
夢から覚めて泣きやまない幼子のように
何を恐れているのかすらわからない
それでも
君を抱きしめたこの腕なら
その哀しみも抱きしめられるから
今は無力なこの手を離さないで
今は一緒にこの雨を眺めていよう
ずっと傍にいてあげる
この争いと憎しみの交差する世界で二人
願いを掲げよう
君にはその権利があるだろう?
どうかいつの日か
優しい雨が君の上に
優しい雨が君の心に
祝福のように降り注ぎますようにと
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目を閉じると思い出す
子供時代の何気ない日々
雨の日の湿った匂い
夏でも冷たい台所の床
温かいストーブと曇った窓
夕飯の支度をする音と湯気
階下から聞こえる笑い声
いつまでもこのままだと思ってたそんな毎日
みんなここでずっと一緒だと思ってた当然の毎日
ありふれた風景
ただそこにいた家族
旅立ちのような静かな別れ
もう戻る事ないあの日々は
記憶の中で暖かく優しく切ない
もう一度作れるだろうか
こんな風景を
こんな家族を
こんな別れを
生活とは
二度と戻らない毎日を生きるという事
かけがえのない日々を知るという事
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君の居ない朝は
隣にもう一つ
君のカップを置いておくから
君の居ない午後は
隣にもう一冊
君の読みかけの本を置いておくから
君の居ない夜は
隣にもう一人分
君の場所を空けておくから
いつだって君の場所を
作っておくから
いつだって君の事を
考えているから
いつだって君を
包んでいてあげられるから
近くに居ても
遠くに居ても
いつだって君の場所を
一番近くに作っておくから
僕の隣が君の場所
君の隣が僕の場所
今日もまた
君がこの扉をノックする
そしたらいつでも
最上級の笑顔で出迎えるから
安心してここに来て
そしてその暖かい微笑で
この部屋を満たして
あぁ、
なんて素敵な毎日だろう
なんて幸せな毎日だろう
今日は涼しくて過ごしやすいね
さぁ、何をしましょうか?
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恐る恐るその一歩を
踏み出してみる
それは深い谷底を覗き込むような
それは真夏の太陽を直視し続けるような
何かと引き換えに手にすべきもの
先を見たくなくて
夢の中で暮らしていた日々には別れを告げよう
後悔するのなら
このまま今が崩れていくだけなら
何かを捨ててでも
その手には力がある
恐怖と引き換えに
がむしゃらに前だけを見つめていられる
必死な、子供じみた
それでも確実な
魔法のような力
誰もが持っている
それは生命に直結した
原始的な力
疑ってる?
信じてくれた?
そんなんじゃない
理屈じゃない
そんな感情どうでもいい
ただあふれ出る
押さえきれない
そんな当たり前の
誰もが持っている原始的な力
ここに生まれたということ
ここで生きて行くということ
そのままでいいの?
本当は解ってるんだよね?
見えないけれど存在している
真昼の月のような
そんな力。
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この場所で
ずっと足踏みを続けているのは何故だろう
この場所に
ずっと固執し続けているのは何故だろう
時々そんな疑問が頭をかすめて
何もかも切り離してしまいたい気がするけれど
何もかもうまくいくような気がするけれど
自由になったその手は
氷のように冷たいだろう
そう想って
今この手にあるものの愛しさに気付く
どんなささやかな日々にも存在する小さな幸せ
きっとそこから始まる
そこから始まるべきでしょう?
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あなたがあんまり優しいから
あたしは意地悪になってしまう
それでも
あなたは笑っているから
あたしはワガママになってしまう
それでも
あなたはそれをワガママとも思わないから
あたしを残酷な気分にさせる
そんなあたしだって
気持ちよく晴れた日や
一日にさよならを告げる夕方には
あなたに特別優しくしてあげようって思うのよ
優しい笑顔で
あなたを受け止めようって思うのよ
だけど気付いたら
やっぱりあなたが優しい笑顔で
あたしの全てを受け入れてくれているの
かわいいね
儚いね
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風のない真夜中に
煙草から真っ直ぐに立ち上ぼる煙
微かな頭痛
あの頃
痛いくらい手をにぎりしめ願った想いすら
消えていきそうなこんな夜
涙すら流れないこんな夜には
大事な何かを思い出すために
シガレット・ケースから
煙草をもう一本
あの日の自分に笑われないように
あの日にぎりしめたこの手を緩めないようにと
もう一度強く手をにぎりしめ
涙の代わりにもう一本