詩人:遥 カズナ | [投票][編集] |
ゆっくりと…
視力が取り戻されて行くように…
静寂な東の夜空の帳は
ぼんやりと開き始める。
やがて冷たい大地と空と海を暖めながら…
ゆらり、ゆらりと…
日は世界を巡り来る。
闇を西の空へと追いやりながら
永遠に
朝は世界を
進んで行くのだ。
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水浴びをしようとして
浴室で整然と並ぶタイルを眺めていたら…
ここはまるで太古の墓の王の間のようじゃないか?
遊びたくなって
明かりを消して
横になると
冷たい背中に身を清められるようで
いよいよ面白いではないか
三千年のファラオの夢に興じてみた…
だけど
君に同じ事を奨めたりはしないよ
こんなに面白くて
面白くて、面白くても
決して奨めはしないよ
君が僕に
他に面白いオモチャや遊びを教える事が出来るなら
その資格があるかも知れないけれど
だから
決して奨めたりはしないよ
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浜辺で拾った
貝のカケラ
「あの砂浜で生まれたの」
粘液と共に吹き出され
清らかな肉を包み
命が当たり前みたいに側にあった…
月が照らしていたのを覚えています
潮が引いていったのを覚えています
蟹達の噴く泡の弾ける音を覚えています
轟く波を覚えています…
朽ち果てた今
幾億の仲間達と
この砂浜の
この星で
無限の宇宙へ
溶けゆく事を知らない…。
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男は鷲の眼
褐色の断崖の頬
研ぎ澄まされたナイフの唇
暗黒の荒野にあって
迷信を恐れず
嵐の海にあって
星を読む
家族を愛し
不屈の信念を杖とする
正確な論理と洞察力を忠実な犬のように従え
閉ざされた未知の喉笛を迷う事無くかっさばく
目も眩む真実に
身じろぐ事も無く
偽りを踏みしだきながら
新たな未知へと旅立つ…。
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タンスの奥に仕舞われた扇子は
パタパタと開くと
こぼれるように
女の人の
良い香がして
子供だった僕には
目を凝らしてもぼやけて見えない花を見るような…
そんな歯痒く切ない思いをしたものだった…。
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雨の夜は
遠くの街へ
来たかのよう
彼も彼女も
遠くに居るよう
全てが
過去の事のよう
雨の夜は
船の旅をするかのよう
暗い海のただ中には
船の明かりの他に
なにも
なにも
見えません…
静かに
じっとしていなさい…
豊かな
寂しさと言うものも
あるのです…。
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ソーダ色の空
溢れる泡の雲
さよなら太陽
閃く波しぶき
オレンジに闇と光りがざわめく境界線に
つんざき吹きすさぶ
もうただ…ただ行く…
風の音が五感を一つに溶かし
羽ばたきもせず
グライダーよりも
純粋な風そのものになる
陸が閉ざされた二次元の紙切へと どんどんとなって行く…
沖は人魚の姿
メデューサの呪いが
波間に見え隠れしている
このままグラン・ブルーのイルカと帰れなくなるまで…
世界の果てへ落ちてゆきたい