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遥 カズナの部屋  〜 投稿順表示 〜


[69] 夕顔
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渚の夕顔は

白いワンピースの少女のよう

その夕立に濡れたしどけなさよ…

可憐と呼んで通り過ぎるに忍びず

眺めていると




ようやく日の射し始めた砂浜で

君を囲む鮮烈な黄緑と白

葉と砂の色が鮮明さを競い始め

その影も濃い程に

風は

君の虹色に輝き出したワンピースの可愛いらしさにいたたまれず

迎えに遊びに来ては

連れ去ろうとして吹いて

その度に

濡れた髪のようなツルをクルリと弾ませ

花びらの裾はひざ小僧を隠そうとしながら

ハニカミ




少女は優しく

僕に

微笑むのです…

2006/12/04 (Mon)

[70] 棉のシャツ
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洗い立ての棉のシャツみたいに

優しい君の気遣いを

そのまま君のありのままの心と感じながら

毎日を生きているよ

心が

どうしようもない事に駆られそうな時も

人の

理不尽な毒に濁りそうになっても

おびただしい腐敗と喧騒に汗塗れに汚れ

クシャクシャに萎びてしまいそうになっても…








君のひたむきな思いで洗濯された

白く香の良いシャツに腕を通したなら

何もかもみな新しくなる

今日一日を

君と全うしたくなる

2005/11/21 (Mon)

[71] バーチャル・ファイター
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君の盲目の目を

癒す術を探して

旅に出た

デタラメな医者、曖昧な占い師、高慢ちきな教祖達。狡猾な商人、迷信や化学、怨念や逸話…雑踏に苛まれ

知らずうちに僕は人を恨むようになっていった…

全てがデタラメな世界

君を痛め付ける事すら糧とするこの世界

こんな世界の全ての人を盲目にして

僕も目を潰してしまえば

楽園が出現する

平和ボケしたクズどもがのたうち回るのを尻目に

君と暖かく闇に包まれたい…





君の苦しみを全ての人に叩きつけてやる為に

全ての人を盲目する猛毒を探している

全てが

バーチャルなこの世界で

2005/11/20 (Sun)

[73] 清らかなる御霊へ捧ぐ
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僕らを包む全てへ

君はなっていったんだね…

君の体が灰となり

空気に溶けて

大気と一つとなった時

君を呼吸した僕らの胸は

痛くなり

この体の隅々の血に

君を感じたよ…




やがて瞳の毛細血管から

静かに涙腺へ至った君は

優しく頬に

流れ出て

僕らの汚れた眼を

洗い清めてくれた…




君が名残惜しんだ

この美しい世界




この君の全てに

相応しくなりたい…

2005/12/03 (Sat)

[74] 弁当箱
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残業で

深夜の帰宅

狭い台所で

弁当箱を洗う…




妻と子の小さな寝息を妨げぬように

優しく

静かに…




仕事は

明日も目の回るような忙しさになるだろう…

けれど

共働きの妻は

私の為に

夜も明け切らぬ寒い朝に

この弁当箱に慎ましく

私の好きな卵焼きやら
焼き魚やらを詰めてくれるのだ

だから

何も辛い事等無い…




疲れ切った体

温かい心で

私は

静かに

弁当箱を洗う…

2005/12/08 (Thu)

[75] 普通になりたい
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私の成り行きを

何一つと言えど人のせいにはしまいと

この体を結ぶ紐と言う紐を
きつく締めているつもりだ

片手で水を掬って稼ぐような日々

申し訳の無い思いをよそに

妻と幼子の拙い会話は

温かな湯のように

心の背から掛けられて

私は

解きほぐされる…




お前達の為に

病気に成らぬよう

毎晩飲んでいた酒も止めた

酔って嘘塗れに塗り潰されてしまいたかったこの世界で

お前達は私の道しるべになったのだ




その道すがら

いつか

当たりまえの

普通の詩を

書いてみたい…

2005/12/28 (Wed)

[77] 鍾乳洞
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真っ暗な

誰も知らない鍾乳洞では

幾つもの

水滴が弾ける度に

溜息の余韻が

百年も

千年も

しとしとと…折り重なり

白い

石灰質の寝床には

あまりに透明な

光りを知らない地下水が

ただ清らかに冷たく

湛えられていて

それは

青空の白い雲

夜空の碧い月

波打ち際で砕け散る泡に

何一つと言えど引けをとらず

美しく

切なさに

歯痒ささえ

残すのです

2006/01/10 (Tue)

[79] ヒマワリ
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写実的な カラーの点描画の美しさで描きたかった…

日差しに ほくそ笑むヒマワリの頬は

君の頬

君が「好きだ」と言った花

明日への期待に溢れそうな笑顔

手の平を伸ばせば

落ちて行きそうな位 青く澄んだ空に

僕には予感がしていた…







眩しさが際立つ程 影の不安は色濃くなってゆく…

何度も描こうとしたのだけれど

筆を握った僕ではなく

未来を見つめる その瞳を

どうしても上手に

描けなかった…






もう二度とは描けない…






ヒマワリを見れば

君を思い出す






ヒマワリ






僕よりも

明日を愛した君

2006/09/09 (Sat)

[81] 綿津見の眼
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綿津見の紺碧に潤んだ眼

その深淵より聞こえる口惜しき魂達の慟哭
最も巨大な海獣達の木管楽器の遠い音色

深海より豊潤な息吹のように沸き立ち 閃くプランクトン

轟き打ちあぐる波しぶき
目に沁る潮の霧 迎え煌めく小さな虹

回遊魚の鱗のあまねく過ぎ去る大海原
それを掠め 翼を潮風に洗いしだく海鳥達

流氷と氷山の うごめきひしめくオーロラの彼方から
碧い月の砂浜に残る海亀が辿った家路まで

太陽と月の旅立つ扉

その安らかな寝床

私を誘う綿津見の紺碧に潤んだ眼






嗚呼…海よ







2007/12/13 (Thu)

[83] 滝のほとり
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ほんの ひとときの

きらめき

笑いはじける

水しぶきと虹

肺を満たす清涼感

抑え切れないときめきが

雫に跳ねた若葉の頃




川のせせらぎ

戻らない 一瞬 一瞬

切なさに 追いつかれるよりも先に

はしゃいで飛び込んだ滝壺




日の射す

渇いた岩の上には

翼をやすめた蝶のように

色とりどりに乾されたシャツたち…




滝のほとり

あの日の僕らを映し

過ぎ去った

澄んだ清流のみなも

その 今もたゆまない

眩しさよ…

2006/03/08 (Wed)
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