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遥 カズナの部屋  〜 新着順表示 〜


[102] ビック フィッシング
詩人:遥 カズナ [投票][編集]


「フィッシングは断じて
スポーツではない ハンティングなのだ」













つんざき 軋むタックル

「覚悟していた」

未知との接点に渾身の戦略が悲鳴をあげる

「待っていた 待っていたのだ」

両の足の平をこらえ
背筋から冷たく吸い込まれて世界の外へ吐き出されてしまいそうな気配に耐え抜く

螺旋の非常階段を全速力で駆け上がる

仕掛けを伝い
獰猛な衝撃が
尻尾を跳ねただけで猛獣だと教えてくる
けれど 糸を緩める気など微塵もない 
千載一遇のチャンスにめぐり会えたのだ

旋盤機のように頑丈なリールから
嘘のようにラインは弾け出てゆく

逆巻く波の向こう
鋭く弧を描くロッドは
猟犬の眼光のような穂先を海底の獲物へ向け続ける

張り詰めたラインが潮風を掻き裂き
笛のように鳴く

全開の格闘は限界を誘い 弱音が裏口を探して
立ち上がりそうになる
一呼吸をおいたその刹那
迷う瞬間すら投げ捨て
ギアを重くおとし
全身全霊の賭けに打って出る

ひたすらに
後悔の届かない結論を追い求め 腕を振るう














レコードクラスの獲物を足元に
武者震いが膝から込み上げ 現実の歓喜が息切れの向こうから ようやく迎えに来てくれる

今夜は最愛の仲間達と
最高の獲物をさかなに
酒と釣り談義に酔いしれよう

フィッシングは
果てしのない浪漫に満ち溢れている

2010/07/31 (Sat)

[101] はっぱ
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そこいらにある
木の葉に
私はなりたい

誰からも
何の抑揚も込められず
ただ「はっぱ」とだけ発音され

どうでも良いみたいに
風に吹きっつらされて
千切れて 掻き消されてしまいそうな青空に

涙でも 笑顔でも 怒りでも無い

爽快な緑の息吹きを
いっぱいにふりまいて
貴方の呼吸の健やかな
たしになりたい

その存在感さえ希薄なままに
この幸せと命とを引き替えにしたら

ありきたりすぎて
忘れ去られるという
自分の取り分を
慎ましく受け取り

自然のいとなみと
やわらかく握手をかわして

青臭く 青臭く 青臭い
不器用さで恥ずかしげに
うなずき

落ち葉に貴方が戸惑う頃には もう全てをまっとうして

青空に掻き消され
きれいに
きれいに

なくなっていて
しまいたい…




2007/01/24 (Wed)

[100] 沖縄から
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三線の音よ

めくるめく世と

先祖達の鎮魂に

轟く若者達のエイサーの気勢



その魂の起源を惜しみ無く海の彼方へと解き放ち

腹を貫く

数万の太鼓の一斉の旋律よ



遠く東南アジア迄にさえ

木葉程のサバニに身を託し

恐れを汗と共に払い

家族の安住を気に掛けながら

抑え切れない好奇心に

遥か彼へ帆をたなびかせた先祖達よ



くじける事を恐れ無いひたむきさで

ひたすらに心が無垢であるように

私の魂を その眼のように御守り下さい








遠く潮騒と三線の音色…











2007/01/02 (Tue)

[99] 山猫
詩人:遥 カズナ [投票][編集]

月光が裂いた
木々の影絵の獣道

油断を欠片さえ残さぬよう
枯れ葉を宥めすかすように踏んでゆく

松ぼっくりの兄弟達
置いてきぼりの蛇の脱け殻
イタチの乾いたあばら骨

狼共の縄張りをやり過ごし

フクロウ達には会釈をする

近頃は
犬の匂いがするから
どうやら
人間が来ている




もうこの森には居られ無い



峠から臨む満月
輝く琥珀色の毛並みを
サラサラと逆撫でされて
身震いし 振り返れば

麓の谷に流れ込む風が
海の白波のように
森一帯を撫でながら
こちらへ駆け上がって来ていた




生まれ育ったこの森




寂しささえ
残せない獣道

闇に怯える
蛙や鼠の気配を求め
銀に輝く流れ星は
峠の向こうで

スッと消えた…








2022/10/08 (Sat)

[97] 
詩人:遥 カズナ [投票][編集]

私の後ろで

凧の糸巻きを握る貴方を

日射しの眩しさにかまいもせずに ただ空を見上げ

振り返れなかったのは

照れ臭さだったのかもしれません…

文具店で500円で購入したそれは

大空と公園をつなぎ
バサバサと自由をなびかせていました




現実に貴方の握る糸巻と 私等うわの空の凧との間で

今も過去も

私の迷いは
糸を掴み それをたどり
凧と貴方との間を
行ったり来たりしています

けれど…

後悔は許されません

『自由とは糸の切れた凧ではありません』

この苦しみを無限に謳歌せねば

あの時 糸を断ち切り貴方を残し報いは

癒しきれません

2006/12/10 (Sun)

[96] 君を好きな僕の報い
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君が俺を嫌いでも

俺は君が好きさ




君が俺を嫌いだなんて

どうでもいい事だから




だって

そんな事

俺は知っていたから…




俺が君を好きだとしても

俺を嫌いじゃなくなる必要は無いさ

そしたら

俺の好きな 君じゃあなくなってしまうじゃないか?



だから

どこまでも

どこまでも どこまでも…




俺を嫌いな

俺の好きな

君のままで いてくれ




この辛い気持ちこそが

君を好きな

僕だけの

報いなのだから…





2007/04/30 (Mon)

[95] 
詩人:遥 カズナ [投票][編集]

あまりに混沌とした

真っ黒な世界で

私のこの心を中心に

宇宙を引き剥がし

全てを裏返しにすると…

ただ白い紙の上で

私は一つの黒い点として

ひたすらに

点である意味を研ぎ澄まし

馬鹿に鋭く

ここに存在し 存在し

存在する事以上を

僅かですら願う日々です

2006/11/23 (Thu)

[94] 
詩人:遥 カズナ [投票][編集]



私が伝えたい事は
ささやかさに
そっと添えるようでいて
なのに確かに頑なに
貴方に届けさせて下さい

そう それは
文庫本に挟まれた栞のように

そこから また
怯まず 始められる
勇気と願いを込めて

めくるめく日々のページの狭間に疲れ果て
生きたまま埋もれてしまいそうな夜

それまでの 今までが
無駄でもあったかのように掻き乱し 荒れ狂う
嵐の後にも

明け方

彼方まで淀んだ曇り空の中僅かに覗く金色の晴れ間に一筋の虹が覗くように

丁寧に挟まれた一枚の栞は

何もまだ
終わってはいない
証しの筈だから

幸せになりたくてした
約束がそこにあるから

僕らまた

ここから

始めよう






2007/08/12 (Sun)

[93] 吸殻の世代
詩人:遥 カズナ [投票][編集]


コンクリートとアスファルトで固められた地べたに

唾と吐き捨てられた煙草の吸殻

掃除夫達の屈む視野に映る浅はかで怠慢な世代

ひがみと反骨を取り違え
自分の親よりも老いた世代の頬に
先祖が命を費やし受け継いで来た己が土地に
恥を吐き捨て 足の裏で踏みにじり
燻る炎を その血肉の肌に押しあてがい
磨り潰す 有耶無耶な世代

尊厳と言う言葉の重さも知らず
達観を気取り 放蕩と自由の天地の差さえ見分けがつかない
感謝すべき理由を自堕落に濁し
いざとなれば
似た他を引き合いの贖いに
逃げ道の詮索ばかりに慰めを見いだす

意味も無くただそこにある恥ずかしさに麻痺した
その醜態

まるで
路上に吐き捨てられた
吸殻そのものだ






2008/11/13 (Thu)

[92] 言葉
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この文字は

確かに 貴方に

届いているのでしょうか?




あてずっぽうで

私は 書いてはいません

貴方の心に語りかけているのです…





もしも 私のこの言葉が ただの自慰なら

私には 貴方が 結局はどうでも良い人になってしまうでしょう…





だから

いつも いつの時も

貴方に

何と話し掛けようか?と

私は迷うのです…







貴方が読んで下さった事が徒労にならぬよう

私の伝えたい この大切な思いが

無駄にならぬように

いつまでも

いつまでも 私は迷い続けるでしょう…





言葉は

大切な人を探す為の

術の筈だから

2006/09/17 (Sun)
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