詩人:遥 カズナ | [投票][編集] |
何一つ染みの無い雪の結晶が
超電導帯の黄金の基盤の細密さを充満させ
誰も知らない教室の
窓を映したビーカーの中
チラチラと
万華鏡を回し
完全に不完全になろうとして
揺れている
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色とりどりの花の咲く種を
君にあげたい
独り占めにしたら
採れた種が
寂しかったから
やっと見つけた
素晴らしい曲を君に伝えたい
君もきっと
誰かに伝えたくなるよ
一人では
とても切ない曲だから
本当の寂しさは
独り占めに出来なくなる
だから
君をみんなに紹介したいのさ
本当に寂しい Color
きっとみんなも君を好きになる
みんなもきっと誰かにそれを伝えたくなる
本当に寂しい事は独り占めに出来なくなる
だから
独り占めにしないで
君も
君を
独り占めにしないで
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不幸を知らない
オママゴト戯言は
恨めしく
垂れ流され
痛い事が
何より嫌な私は
とにもかくにも…
蓋をして
釣りに等に出かけ
煩わしい
人のあるべき様を忘れて
水面にひっそりと立つ
浮きに自分を重ねて
緊張感と倦怠感を混ぜ合わせたら
今よりましな自分を
見据えるのです
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突然の風に音をたてて落ちた
母の病室
それに
退院予定日が印される事は無かった…
実家に戻れば
会える気持ちのまま
線を引くように裂いた音
妻の病室
出産予定日は近づき
裂いた一枚を
捨ててしまうのには虚しく
丁重に紙飛行機にする…
窓を開いて
悲しい夢から覚めたような気がしても
潤み出す景色
めくるめく日々の向こう
そよぐ母のもとへ
我が子よ放て
カレンダーの紙飛行機
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困った男だ、お前は
「歯医者じゃ麻酔はしない」のだと言う
酔って車をぶつけたりする
「俺は長生きは出来ないだろう」と言う
日焼けした顔で目だけがギョロギョロと睨み
ある夜
二人で飲んでいると
「最近、仕事が減った…」と鼻から溜め息ついた
いつか
子供をビデオに録りたいと話したら
「馬鹿じゃないか?」と罵られた
思い出は心に焼き付けるように、両の目でしっかり見るのだと…
お前は本当に
困った男だ
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ドカリと椅子に腰掛けた
さあ 今日のお客さん
靴を磨いて差し上げましょう
縫い目に絡む土埃は
ブラシでサラリと掃き落とし
底に付いた泥やガムは
ナイフでそっとこそげ取る
右の足から左の足へと
あかぎれた指に布を巻き
隅から隅へと靴墨を塗り
息を吐きかけ磨きあげる
紐も硬すぎず 緩すぎず
時間も掛け過ぎず 手も抜かず
顔が映る程にピカピカに
さあ 誰がこれ程磨けよう
されど 誰がそれを知り得よう
お代を静かに受け取って
隅々まで綺麗になられたらら
どうか 清々しく御立ち去り下さい
僕の仕事をその足に
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俺は
言葉等…
初めから
無意味に近いと承知で
戦っているのだ
それを
さも複雑な、不穏や欺瞞、憎悪や不純、差別や怒りを人のリアルな核心か本質のように
くだらない
全ては単純だ
理由等、正当化する為の後付けに過ぎない
答えは初めからそこにあるのだ
それを
達観したかのような
悟ったような
権威があるような
有り難い教えのように…
いいか
ただ男は何がしかのもっともらしい理由を付けて未知の丘の向こうへ行きたいだけだ
俺もお前も魂からの嘘つきなのだ
分かったか?
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夕暮れのヤシの木の肌は
嫉妬のような日の熱い眼差しに
きめ細かなブラウン管の三色
青、黄、赤…の光る粉が
触れたならサラサラとこぼれるように鮮やかに息づいている
台風の度に生死の境目さえ知るその腕は
こんな優しい午後にも休まずに空を仰ぎ
手の平を強く開いて
幾すじもの爪を空を裂く切り絵のように深く浮かび上がらせる
それは滑るような瞳の艶やかさで風に揺れ、眩しく日を反射したりさえするのだ…
『生きる事をひがんじゃいけないよ…』
傷だらけの幹にそっと額を当ててみたくなった
風に立つ美しい人のようだから
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夜
君の手を引き
城跡へ行く
草木の吐息を胸いっぱいに呼吸しながら
ヒタヒタ
石畳を歩む
暗い石の門をくぐると
城壁はクルリと取り囲み
月の明かりを水のように湛え
僕らは宙を漂うようだ
やがて
粗く冷たい城壁の岩肌にもたれた君
どうか今
その横顔を見詰める僕に気付かずにいて下さい
もしも気が付いても
素知らぬふりをして…
いつしか
月に寄り添う雲のように
僕の肩にそっと甘えて下さい
.
詩人:遥 カズナ | [投票][編集] |
路面に雨音のような余韻を残し
真夜中の海中道路を
緩やかなスピードで過ぎ去る…
沖に取り残されて浮かび上がった
長くて遠いリーフのようなこの道で
水平線をたどる…
白く伸びた灯台の明かりは
暗い空と海の境目を探すように彼方へと旋回して行く…
その向こうには
島影を忘れた
小さな街明かり達が
ちぎれたネクレスの七色の光りの粒となって
横へそっとちらばっている…
ラジオからのメロディーは奇跡のような選曲で景色と溶け合い
人生が『物語』なのだと教えてくれた
「I'm Not In Love…」
誰も知らない
僕の物語