詩人:遥 カズナ | [投票][編集] |
嫁が
嫁が息子の
手を引いて
保育園から
歩いて
帰ってくる
2LDKの
二階の
アパートの
バルコニーから
よちよち歩きの
息子の手を引く
嫁が
途中で抱っこされたいのか
泣き出して
座り込む息子を
しゃがんで
宥めながら
役場の前を通り過ぎ
私のもとへと
帰ってくる様子が
何年経とうが
今も
私を
奮い立たせている
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こうして
何も書けなかった
引き出しに忘れた
便箋のように
いいなずけ
大草原
大海原
僕は
苺味のアポロ
忘れられたいコリドー
ゲッターロボ
嘘はない
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埋もれていた
爪が掻く
まだみずみずしい土地
明日より新しい命
ほり下げて
下って
ゆきます
まだ
分からない
こと
ばかり
掻き捨てて
ばかり
いられなこと
ばかりばかり
この事
ばかり
引っ掻き捨てられないように
真っ黒い爪で
数限りない
いらないこと
私をいらない人が
とか考え無いように
また掻きます
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吠え面だよ
吠え面
かかされた
書こうとすると
縮こまって
しまう
白波のたつ
断崖の上に
灯台がつっ立っている
入口脇に
白く塗装を塗り重ねられた
分電盤の扉が
錆に負けそうになりながら
半開きになっている
あたりには
潮風に耐え続ける
岩肌とそれの
言い訳みたいに草原しかない
謝れば
心を込めた事になるのなら
どんなにか
楽だろうに
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明後日からしたら
今日は
良かった
巻き舌みたいな
喋り口で
腕っぷしも
そこそこ
昨日からしたら
明後日は
辛くて
ラジオの
周波数を
回しても回しても回しても
何がなんだか
今日からしたら
なにもかもが
しょうがないから
空を
見上げるしかない
それでも
真っ青な空って
やっぱり
いいよ
いいよ
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壊れた
オルゴールの
音色
苺か
梨
リズムが
微妙に
誰の正しいとも
違う
そんな正しさと
疎遠で
ありながら
より
誰の
清らかさに
でも
親しく
あろうと
するように
ずれていく
割れてしまった
木琴の音色のような
夕日に
置いてきぼりにされた
桃黄金色した
雲のように
書き手に
ペンを投げられた
まだ途中の
詩のように
ただただ
こうして
誰かに
寄り添いたがって
分からせたくて
互い違いでもいい
何にも無いのに
コーヒーの香りがする
新たな位置づけ
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(注意
残忍、残酷な表現のある作品です。
グロテスク、残虐行為の伴う文章に反感や抵抗、不安感を残した経験、予感のある方は絶対に読む事をお控え下さい。
注意事項として警告致しましたので
本作の表現への誹謗中傷は一切、受け付けません。
宜しくお願いいたします。
念の為ですが、内容はフィクションです。)
子犬がいる
可愛いい子犬だ
でも飼う事ができない
飼い主も散々探したが
どうにもならなかった
今は無き祖母は
猫を飼っていたが
雌の猫で
野良猫との子がよく産まれて
そんな時
祖母は
ビニール袋に仔猫達を入れると
袋の口を縛り
あろうことか
近くの防波堤から
海へ投げ捨てていた
悪魔だと思った
でも俺も
小学生の頃
ハムスターを飼った事がある
何の知識も無かったから
向日葵の種の代わりに
スイカの種を与えていたら
程なく餓死させて
しまっていた
生き物を飼うのに
無責任さは許されない
子犬は
俺が死なせてやらなければ
と考えて
袋に入れて
袋の口を縛り
ただ
そのまま海にでは
もがき苦しみながら死なせるのでは
あまりにかわいそうなので
袋に入れたままで
頭を掴み、素早く首をねじり殺す事にした
釣りをするから
魚を締める事は普通に出来た
それでも
初めての頃は
抵抗があった
そうして
子犬を
袋に入れたまま
左足の膝で
小さなからだを
殺すつもりで全体重で押さえつけ
両手で頭の部分を
力一杯ねじ回した
一瞬で終わらせてやるのが
優しさだと
信じて
動かなくなった
子犬の亡骸は
燃えるゴミで
処分した
ところが
数日して
近所て
瀕死の子犬が
ゴミ捨て場で
見つかったと
聞かされた
死んでは
いなかったのか
それどころか
さらに、もうしばらくして
ある日曜の朝
近くのスーパーへ
買い物へ歩く途中
明らかに
不自然な足取りの
犬を連れた人が
こちらへ向かい
歩いて来た
すれ違いざま
よくよく犬の
顔を見た
あの子犬なのか
一瞬だったが
俺の目を
見つめ返した
その瞳に
吸い込まれるような
思いがした
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夕闇の
岬の尖端が
車窓の左はしの方から
見えてくる
もう
恋に陥ることはない
助手席から
君が水平線へと
手を伸ばし
連れ立って
今でも
たゆみないスピードで
記憶をかけぬけ
繰り返し
僕を
振り返るとしても
もう
恋に陥ることはない
あの水平線と
手を繋ぎたくて
アクセルを踏み
更にスピードを上げ
どこまでもどこまでも
どこまでへでも
たどっても
やっと僅かな日差しに
なりきって
滞りなく
澄み渡るしか
ないように
もう
恋に陥ることはない
もっと静かに
誰よりも
かけがえもなく
鮮やかに
密やかに
見惚れる
程に
もう
恋に陥ることはない
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外で
鳥の
さえずりが
聞こえて
愚痴ばかり
言いたくなります
笑いたくなる
ふりを
して
みたくなります
そうして
みずが
ほしくなる
くらいに
歩きたく
なるように
もう
何にも
みたくは
ならない
ように
何にも
みず
何にも
いらず
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小3の頃
兄貴の
自転車の後ろに乗り
片手に竿
もう片手に餌
えっちらおっちら
埋立地のもう向こうへ
釣りをしに
出かけた
途中で10円ハゲが
「泥棒と巡査」をやろうと
誘ってきたけど
兄貴は無視して
ギコギコ自転車こいで
防波堤に着いた
袋から臭い餌を出し
針に刺して
テトラポットに降り
仕掛けを投げて
座って
浮き見て
ぼんやり
もう
夕暮れ
パトカーのサイレンが
聞こえたのは
あとから思いだした
10円ハゲは
あの後
一年生も誘って
「泥棒と巡査」を遊んで
巡査が捕まえた泥棒を
裁判して
防波堤の端で
海へ
突き落として
しまっていた
突き落とされたのは
近所のアパートの一階の
顔見知りの子だった
葬儀に半狂乱の母親の声に
外に立ちすくんで
ドキドキしていた
10円ハゲは
同級生だったが
1、2年して道端で
プラモの組立てをしていると
現れ
話しかけてきた
「それ幾らした?」
「200円」
それっきり
二度とは会わなかった
家もどこにあったのか
事件の後どうしていたのか
兄弟はいたのか
一緒に遊ぼうと誘われるような
そんな間だったはずなのに
何も覚えていない
忘れてしまいたかったのかも
しれない
でも
クラスの記念撮影に
その姿は
確かに今も残っている