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遥 カズナの部屋


[132] アンドロメダの男
詩人:遥 カズナ [投票][編集]




あまり多くを語ると
尚 寄る辺なくなりそうで 小さく そっと ため息をついた

アンドロメダ星雲から
俺は地球へとやってきた

こんな俺が
乗り物酔いに弱い事なんぞ 知らぬが仏の喧しい うすらトンカチなカモメ共の飛び交うフェリーの甲板
紺碧のエーゲ海からダーダネルス海峡へと差し掛かる

今のうちに伝えておくが
この俺に
気安く声をかけないでおいてくれ
何しろ俺は
あのアンドロメダから来た男なのだから

「ハロー、ハロー 応答を願います 聞こえますか、聞こえますか
こちら地球、こちら地球 聞こえますか 応答、願います…」

通信機から返答はない

俺の知る銀河とは異なる周回軌道の長い旅路の果て
この脳味噌は
大宇宙に瞬く星々の数を なぞる程の痛みに耐えてきた
それらは
航路にとり残されゆく白波のように
刻々と遠のいてはいっても
途切れることはない

この目は
銀河系の渦の中核
いて座に抱かれ 赤子のように戦慄くブラックホールの超重力場に 星々が呑み込まれていく様を見た

銀河の衝突
潰えゆく恒星達の慟哭
超新星爆発の閃光
太陽の10兆倍に明るく輝くクエーサー
吹き荒ぶ宇宙塵

地球人類には
おおよそ計り知れない時空の旋律が脳裏を掠める

そう俺は
あの アンドロメダからやってきた
遙々230万光年を駆け抜けて来た男

下船迄のあと一時間を
耐えられそうにも無いというのに







2009/06/13 (Sat)

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