詩人:遥 カズナ | [投票][得票][編集] |
ありきたりな話しでも良いなら
出来るだけ寝床に近い安らぎを見つけて
ここへ広げておきます
どこへ赴いても
そこが
毛布の外であろうと内であっても
自己顕示欲と勝手な達観の片隅
もうなにもかもが
どうでも良い事ばかりだけれど
まだ人の匂いのしない
冷蔵庫の音だけのする台所に
直火で煎ったコーヒー豆の香りが漂う
カーテンの隙間から射す
うすら眼の日差しが斜めに
カップへ注がれる琥珀色を
湯気でぼんやりと醸す
角砂糖が放り込まれ
遠くて涼やかな雲が水蜜桃の色彩いを呈すると
ちいさくスプーンを掻き回ぜ
カップの内側に微かに当たった音のように
雀達がようやく囀り初める
窓の鍵を外し しっかりと開いたら
冷えきった建具の感触をほぐす
温かかな陶器の掴み手がまわるい
センチメンタルな憂鬱が喉もとを通り過ぎ
吹き込んだ 草木に洗いしだかれたばかりの空気を
肺いっぱいに満たして
深い吐息をこぼせる幸せを確かめる
星座が繋いだ掌を放し堕ちて行くと
やがて四千万キロの彼方からたどり着いた
ピチャピチャと青く微笑むイルカの瞳だけが取り残された
馬鹿馬鹿かもしれないけれど
こうしてそれを仰いでいられる
この孤独で十分だ
、