夕焼けは例えるなら水蜜桃の甘さのよう母の背中の匂いのよう失われた大切な手紙のようそれらがすべすべとした一枚一枚のいきいきとした花びらとなってくっきりとした両の手いっぱいの掬い上げた感触を力いっぱい頭上へと放り上げると全身に香りいっぱいではらはらとふりそそいでくれるのに再び掴もうとしてもすりぬけていくようなそんなしかたのない気持ちになる
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