蝶を捕まえてみて逃してやるとその羽の鱗粉が細かに指先に残っていてこんなふうに細やかなものなら羽ばたいている最中にも大気に僅かに振り撒かれているのだろうついでに持っていた地図を何片にも破いて破いて破いて口に入れて食べてみる味はしないその後に人差し指を舐めて鼻先で匂いを確かめそっと宙へとかざすとほんの少しだけ舐めてやっただけなのに風で乾いていくのがよくわかるそう言えばあれが蝶の鱗粉の味だったのか
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