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高級スプーンの部屋  〜 投稿順表示 〜


[562] 才能
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切り捨てられ
切り捨てられ
切り捨てられて
切り捨てられる

無力でも
不満でも
何をしてもしなくても
何もしなかったように
切り捨てられて
切り捨てられる

聴かないでも
読まないでも
歌わないでも
書かないでも
出会わないでも
似たようなもの
何もしない日はない
でも
何もしない日になる
写実現実事実真実
実感を見失っても
完全にもう
切り捨てられている

仰向けかな
俯せかな
視えているものは
何かな
今の状態は
どうかな

芯すら削がれ保てない
触れた底すら刻まれて
切り捨てられて
切り捨てられる

2006/05/01 (Mon)

[563] 舟幽霊の柄杓
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無力でもいい
助けようとする
気持ちが大切なんだ
彼は開き直り
笑顔で
手を差し伸べた

近所に住む
小さな男の子
いつも元気いっぱいで
友達と外で遊ぶのが
好きだった
ある日突然
姿を消した
それから

毎朝電車で見かける
女子高生
部活は吹奏楽部
担当はフルート
ケーキのモンブランが
好きだった
ある日突然
姿を消した
それから

公園で生活をする老人
資産家の息子だった
仲間同士で酒を呑み
他愛のない話をするのが
好きだった
ある日突然
姿を消した
それから

二つ年上の彼女
付き合って二年
同棲して半年
泣いたり笑ったり
色々あったけど
これからも
宜しくなって
誓ったんだ
僕は彼女が
好きだった
結婚間近
姿を消した
それから

それから
無事保護された
学校の裏山で
迷子になったらしい

それから
無事保護された
親とケンカして
彼氏の家に居たらしい

それから
焼死体となって
学校の裏山で
見つかった

それから
別に男が出来て
家を出たんだと知った

近所に住む
小さな男の子は
たまたま見ていた
数人の大人達が
裏山に何かを
埋めているのを

犯人は
特定出来て居らず
依然捜索中で
現場には
犯人の物と思われる
フルートが落ちていた

水も人もスクエナイ
底があって底がない
嘘のようなホラ話

差し伸べられた手は
半透明で掴めなかった
彼を見ると
笑っていた
生気のない顔に
満面の笑みを浮かべ
手を差し伸べていた
僕は落ちていった

そういえば
彼女も好きだったよな
フルートが

2006/05/03 (Wed)

[564] 火間虫入道以前
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退いた分
進んでしまって
元の場所には戻れない
進んだ分
減ってしまって
空腹を誤魔化すしかない
人間の欲のカスを啜り
今日を生きる
明日はない
今日を生きる

塞がる出口の隙間から
だらだらと
流れるような呼吸をし
今日を生きる
もう人間の味はしない
鬼も不味いと
喰ってくれない

元の場所には戻れない
失って
手に入れたものを
貪っても
満たせない生活
すっきりせずに
持て余す時間を
荒らして過ごす
腹を壊して感じる
微弱な孤独の夜の中
今日を生きる

2006/05/03 (Wed)

[565] 青ざめるスカーレット
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i love you
i like you
i need you
きみを愛してる
きみを愛してる
きみを愛してる

私の気持ち知ってる?
貴方が何か発する度
言葉の価値は下がってく
よく咀嚼せずにくれたのは
陳腐でチープな
プレゼント
だったね

死にたい
けれど
生きたい
だけど
死にたい
でもね
生きたい
だから
死にたい
なのに
会いたい
きみに
逢いたい
きみを
愛したい

私の気持ち知ってる?
貴方が何か発する度
言葉の価値は下がってく
よく咀嚼せずにくれたのは
陳腐でチープな
イエナイキズ
だったね

いつまでもずっと未来永劫
永遠に永久に誰よりもきみ
が大好きだよ愛してる一緒
に居たい離れたくないし離
れられない世界で宇宙で一
番きみを愛してるぼくを信
じてついてきて必ずきみを
幸せにするからねぇぼくの
話聞いてる?なら返事して

前戯も本番も短い
蛋白なSEXの後
貴方は私にそう囁いた
全く
重大なことを
軽々しく叩ける口ね
笑っちゃう
さっきのバックみたいに
小刻みに身体を揺すってさ
煙草を吸っても
落ち着かないの?
なら私はこの辺りで
イけばいいのかな?
高揚して紅潮して
イったフリをすれば
それで満足ですか
それが最愛ですか

まだイかないでって
言ったのに
まだ私
終わってなかったのに
早々と
中に出してイくなんて
ホント
勝手な人ね

私の気持ち知ってる?
貴方が何か発する度
言葉の価値は下がってく
よく咀嚼せずにくれたのは
陳腐でチープな
スカーレットだったね

私もいつしか腐ってた
いや最初から腐ってたっけ
最初から最後まで
つまらない言葉しか
使えてなかったし
でも
使い物にならなくして
タダより安いモノにして
ヨイショして
盛り上げといて
その気にさせておいて
部屋に一人
置き去りにして
消えたのは誰なの
そりゃないでしょ

まだ行かないでって
言ったのに
まだ私
終わってなかったのに
早々と
外に出ていくなんて
ホント
勝手な人ね






2006/05/05 (Fri)

[566] 見習い狸の皮算用
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新しいものを
追い掛けるのは
自分の尻尾を
掴もうとするようなもの
過去は常に
最先端にあって
未来に生まれる者ほど
先は長く
辿り着く
その日は遠い

百年早いと
鼻で笑われた坊主は
意地になって
前に前に
手を伸ばす
何かを掴んで
輝く顔
その手を
ゆっくり開くと
そこには
ほこりがあるだけで

和尚の尻尾は
まだまだ
掴めそうにない
先の事しか考えず
足下を
掬われてばかりだと
気付けもしないうちは

2006/05/06 (Sat)

[567] あなたの居ない永遠に
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いつものように
少しじゃれあった後
笑顔で
あなたは部屋を出た
何も疑わずに待っていた
TVのないこの部屋で
壊れたコンポの前で
午前三時を回っても

おかしいな
何かあったのかな
コチコチと進む秒針
立ち上がると軋む床
いつもならとっくに
帰って来ている頃なのに

落ち着かずに過ぎてゆく
当たり前に流れてゆく
あなたの居ない空間に
ぽつんと一人残されて

迷いなく
輪郭を描けても
どれだけ動きを
似せられても
「 」を付けて
語らせても
意味はないな
あなたは居ないし
言葉もないな
私がひとり
呟くだけで

もしも今
偶然に
あなたと
この部屋で
出会えたとしても
無視されて終わるのかな
一言も交わせずに
冷たくあしらわれ
それでも
あなたは
すべてを見透かして
傷付いてしまうのかな

捨てたのは
諦めていたのは
本当は
そう
私は私の過ちを
償いもせず
罰さえも躱し
あなたから逃れて
この部屋でひとり
悔やんでいるだけで
悪いのは全部
誰なのか
自分の口からじゃ
言えなくて

時計はコチコチと
鳴り止まず
私は立ったり座ったり
落ち着きなく
床を軋ませる

あなたの帰りを待って
これからも私は
新しい始まりを遠ざけて
想像もしなかった
この部屋で


―耳鳴りがする
脈絡のない文脈が
不必要に訴えかけてくる
小言みたいな
言い訳を重ねていると
内側から響き渡り
揺れる
古くなった頭蓋骨―


あなたの居ない永遠に
ぽつんと一人残されて

2006/05/06 (Sat)

[568] ハピレス
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最近じゃ
誰に何を言われても
笑顔で返すようになり
本音を漏らすのは
君にくらいで
でも

最後にしたのは
いつだったか
ぼんやりと
考えたりもしたけれど
それ以上は
特に

私の事
本当に好きなの
そう訊かれた時だって
僕は

確かにそれは
幸せで
直に肌に感じていた
それでも
素直に喜べなくて
心の内では
疑問がぷつぷつと
浮かぶから
拡がる前に
静かにぷちぷちと
潰していた
それだけ

そんな風だったから
心はいつまでも
貧しいままで

幸せは
冷めて固くなった
肉のように
噛み切れなくて
けれど
吐き出せなくて
口にしてから
大分経つのに
まだ噛んでいた
もう味もしないのに

作りたての笑顔で
嘘を吐くしか
それからは
別れ話を
振られた時でさえ
本音を
言えなくなっていた

午後六時半すぎ
いつものように
ご飯を食べながら
TVを観ていた
くだらな過ぎて
笑ってしまった
いつもと変わらない
明るい日曜日

甘いものが
欲しくなり
冷蔵庫から取り出した
一口チョコ
食べてから数時間
すると
いつの間にか消えていた
跡形もなく消えていた

確かにそれは
幸せで
僕にとっては
幸せで

2006/05/08 (Mon)

[569] 鬼ごっこ
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叩かれて鬼になる


叩き返す


叩かれてまた鬼になる


もう嫌だ


人のままで


みんなと遊びたい


叩かれて鬼になる


叩き返す


叩かれてまた鬼になる


もう嫌だ


鬼のままじゃ


皆と遊べない


叩かれて


叩き返して


叩かれて


笑われて


叩かれて


逃げられて


追って


追って追って


追いつけなくて


笑われて


泣きそうで


帰りたくて


帰れなくて


泣けなくて


逃げられなくて


追いかけて


追われていて


終わりそうで


終わらないで


終わっていて


終わらないで


逃げないで


待って


逃げないで


置いてかないで


一人にしないで


お願いだから


もうやめて


叩かれて鬼になる


叩き返す


叩かれてまた鬼になる


もう嫌だ


鬼のままじゃ


みんなと帰れない


鬼のままじゃ


家にも帰れない


鬼じゃないよね


人じゃないだろ


鬼のままじゃ


帰れない


嫌だ


もう帰る


嫌だ


みんなと遊びたい


嫌だ


もう帰る


一人でもいい


もう帰る


帰れ


帰れ帰れ


早く帰れよ


早く


帰れ


叩かれて鬼になる


叩き返して


叩かれてまた鬼になる


嫌だ


人のままで


皆と帰りたい


叩かれて鬼になる


叩き返せず


鬼のままで


皆と帰れない


2006/05/10 (Wed)

[570] (再)
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半紙に落とした半生
押え付ける文鎮
散らない記憶
あの日の失敗

ハミングバードを
奏でるように
悔いの残らない
告白をしたかったのに

廊下の向こう側
友達に支えられ
泣きながら歩く
君の姿を
見ながら止まる
チャイムが鳴って
いつも通り
教室に吸われた

この前テレビで
確か観たよな
一晩推敲して
実行したプラン
脚本は既にあって
演じたのは
別の誰かだと
今更気付いた

始まらなかったのに
今も終わらない
必死になって
拭っても
消えない
過ち


繰り返し
繰り広げられる物語
そして例の場面
二人の行方を追っては
あの日の光景
思い出し
再考する

現実は
巻き戻せない
やり直せない
幾ら演っても
停止してる
進まないのは
当たり前
気付いてんだろ
いい加減にしろ

二番煎じの
三文芝居は
虚構じゃない
完全なオリジナル
画面の外に居ても
誰にも見られていなくても
不細工なお前が主役
分かってるんだろ

君が好きだ
ふざけたことを言う
アイツの演技は
下手過ぎて
なのに二人は
ハッピーエンド

沈黙に更ける密室で
水も取らずに
寝転んでばかり
切れたトカゲの尻尾は
トカゲには再生しない
それでも
頭の中
廻る闘争
色褪せながら
どこに行く

僕から抜け出た
塊が
ぺらぺらと
中空を彷徨う
部屋の扉も窓も
鍵が閉まっている
仕方がないと
空に戻る

すっきりしたくて
発射した
笑いながら君は
その場を去った
静まり返る空間
思いの丈を
出し尽くせずに
取り残された

引き金を引いたら
撃たれたのは自分自身
慣れないセリフを
使うもんだから
倒れてしまうんだ
蝉の幼虫の真似をして
うずくまる

成長はしない
そのまんまで
余生を送る

素晴らしい世界を
執りながら
ペース配分も
考えずに走り
たった一度の
試練に破れ
面白くないと
人生を擱(お)く
お前と云う作品の
見所は
どこにある

2006/05/14 (Sun)

[571] 
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種がない

この辺りに埋めたのに

種がない

見つからない

種がない 種がない

この辺りに埋めたのに

見つからない

しばらく待っても

芽は出ない

掘り回しても

見つからない

種がない

種がない

この辺りに埋めたのに

種がない

見つからない

種がない 種がない

僕の種がない

2006/05/16 (Tue)
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