詩人:高級スプーン | [投票][編集] |
夜に眼が光りだす
僕の眠りを妨げる
目蓋の裏が輝き出して
眩しくってたまらない
昼間の妄想を思い出し
続きを考えだして
朝まで
あの娘が好きだ
気持ちを告げられず
薄汚い欲を孕んだ
強くなる思いを
栄養にして
僕の中で大きくなる
思い切り踏張って
血管を何本切れば
外へ排出されるんだ
糞みたいな塊が
今にも爆発しちゃいそう
早く気付いて
眼の下の隈の濃さが
君を好きなサイン
不眠を解く鍵になるから
あぁまた輝き出した
膨らむ欲を
取り出してくれ
自分じゃもう無理だ
暗い夜の隅っこの方
深い闇に隠れて
自爆しようか
誰も巻き込まず
君にも気付かれずに
ひっそりと
粉々にならないと
暴走しちゃいそうだ
考えだしたら
また夜が明けた
陽の光が
僕の眼を突き刺した
すごく痛い
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本物そっくりの
色違いの偽物は
敵として現れ
期待以上の
成果を残さずに
散ってしまうもの
なのに何故
本物以上に
魅力を感じるのか
本物にしかない部分が
欠如していて
本物にはない部分が
付け足されていて
同じ動きをするのに
最後には倒される
決定的に違うのは
偽物だって事で
デタラメに敷かれた
レールの上を
規則正しく
進んでいく途中
突然
彼女が全裸になって
隠し持っていたナイフで
全身の皮を剥ぎだした
リアルな妄想が
健全に生きる僕の
唯一の支えで
本物にはない
偽物にしかない
余計なものを寄越せ
生きていくのが
むず痒くて
たまらなくて
ひたすら頭を
掻き毟った
吹き出した血は
僕が本物だって証拠
だなんて本当か
実際の所
何が本物で
何が偽物か
分かっちゃいない
ただ誰かが
そうだと決め付けて
僕がそれに
従っただけの事
真相を気にした分
遠ざかる真実
だから
自分も世界も
偽物だって暴ける
決め手を欲しがるんだ
頭を掻き毟れ
虚実を見つめろ
この血と交換に
無理矢理手に入れた
余計なもの
取り付けても
僕の色は
変わらなかった
確かなものは
未だ
ぼやけたままだ
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くるくるくるくる
くるくるくるくる
君は好きになる
くるくるくるくる
くるくるくるくる
僕を好きになる
届かない思い
届けない理由
聞かないで
って
聞かせる相手居ないで
あああっ
くるくるくるくる
くるくるくるくる
君は好きになる
くるくるくるくる
くるくるくるくる
僕を好きになる
始まらない
で
始まったのは
脳内マジックSHOW
タネも仕掛けもありません
だって
ホントは
何も起きてないから
あああっ
くるくるくるくる
くるくるくるくる
君は好きになる
くるくるくるくる
くるくるくるくる
僕を好きになる
くるくるくるくる
くるくるくるくる
君は好きになる
くるくるくるくる
くるくるくるくる
僕を好きになる
トンボも落とせない
のに
彼女は落とせない
のに
なのに
あああっ
君は
僕を
好きになんか
なったりしないぜ
とっても
せつナイト
ギャグも
せつないぞ
ツッコんでくれる人も
突っ込める相手も居ない
せつないないない
あああっ
白昼の惨劇は
独りでに
始まって幕を閉じた
舞台裏では
いじけてる生物が一人
蠢いてるだけだから
気にすんなって
誰も見ちゃいないや
あああっ
くるくるくるくる
くるくるくるくる
くるくるくるくる
くるくるくるくる
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夢から覚めた 薄暗い部屋 体が動かない 見たこともない部屋 昨日、寝た部屋とは違う場所 誰も居ない 昨日は隣に彼女が居たのに 「誰か居ないのか」 言ったのに声にならない 突然、目の前が真っ白に 光の先、叫び声がした 意識が朦朧としてきて もういいや 寝 よ 目が覚めると 僕を取り囲むように人が立っていた 知らない顔ばかり並ぶ 「君は眠っていたんだ、四十年間ずっと」 何言ってんだ 学校に行く途中 飛び出してきた車に撥ねられて そのまま意識を失って いままで 確かに事故にはあったけど でも僕はその衝撃で異世界に飛ばされて 妖精に出会って 勇者に選ばれた僕は 冒険の旅に出て 多くの仲間に出会い 多くの敵と戦って そして彼女と出会った 世界を旅して 夢のようだったのに 夢だったなんて 信じられるか 鏡を向けられた 写っていたのは 痩せこけた老人 これが僕 まさか 「リハビリをして 取り戻しましょう」 何をだよ 魔王を倒して 平和になった世界で 彼女と暮らすんだ なのに夢だなんて 悪い夢だ もう一度、目を閉じれば 元の世界へ 冷える頭 冴えて眠れない 眠れない もう帰れない 夢から落ちた
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秘密を
明かせば
悪となり
嘘を
吐けば
罪となる
注意力散漫で
守るべきものが
定まらない今
迫る危機に
対処しなければ
食われて
終わるのか
笛でも
吹かれて
操られるのか
チョコレートが
甘いとか
身動きが
取れず
バカらしくなったとか
生きる動機は
不安要素の
塊で
一見無意味なようで
楽しいのかも
分からない
何の為かも
考えずに
僕は
叫んだ
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鼻のない象
首のないキリン
学のない僕
本来なら
淘汰されゆく失敗作
苦しいがまだ息はある
不自然と理不尽に
挟まれ生かされている
黒い鳩
白いカラス
灰色の僕が宙を舞う
柳揺れる薄暗い朝を
考えなしに空高く跳ねる
起源は何処に行った
理由は何時消えた
調査を重ねるうちに
失われゆく空欄の部分
追いやられて
最後に辿り着く
逃げ場所とは一体
黒い光
白い闇
虹色の僕に何を描けと
これ以上何を
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此処って何処だよ
距離感のないモノは
側に在る気がして
嬉しくなったりもするけど
目に見えない何かは
掴めても感触は無いから
上を向いても
落ちていく日は
収まるまで
近づかないで
ワガママなのは
百も承知
だけど笑っても歪むんだ
明るい唄を
心から楽しく
分かってたって
そうにはならずに
気持ちは変わらない
底に居るから
今はまだ大丈夫
だから少しだけ
朝までで良いから
何処かは聞かないで
此処に居させて
遠近法を無視した
手に入らない場所を
夢見て
うなされる
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君が好きだ、を
口実に
僕は無意味から
逃れようと必死になる
耐えても
絶えても
同じな気がして
君が好きだ、を
言えなくて
実際は
友達の
誕生日プレゼントを
一緒に買いに行こうと
誘っただけ
口実の口実さえ
曖昧に
ぼやかして
話を切って
結局、何も
無かった方向へ
自分勝手に逃げ出した
取り返しが
つかなくなったのは
どの罪を犯した時か
諦めるのを
諦めた毎日
たまに
君に会っても
上手く話せず
目も合わせないのに
好きなんだ
訳もなく
君が好きだ。
思いながら僕は
逃げる口実を
準備してる
他には何も
意味も無いのに
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紅い赤
口につけて
君は大好きだと
僕にじゃれる
頭から爪先まで
くまなく舐める
白い蜜すすり
喜び喘ぐ姿見て
欲に染まる
濃厚な幸せを
感じ合う
甘い一時が
いつしか
苦い思い出に
変わるまで
君の背中の先に
映った景色を
綺麗だと伝える前に
記憶は醜く変色し
僕の前から姿を消した
並んで倒れていた
自転車の後を
二人は
足早に過ぎていく
もう戻らない
嘘は甘く
傷は苦く
心に深く染みて
溶けずに残る
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蝉の死骸も喰えないで
何がジャングルか
蟻が代わりに
むしゃぶってるから
風が飛ばして
土に還すから
空にヨダレを垂らした
夢だった
乾ききった舌を
汚されるがままの
為すがまま
ヒビ割れる体
後から後から
跡形なく埋められる
より巨大に
より強大に
あらゆるものを
取り込んで
成長してゆく
地の果てまでも
侵してゆくが
やがて朽ちて
飲み込まれるのは
我がコンクリートの方で