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高級スプーンの部屋


[438] 早い逝交渉
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丁度良い温もり
ほんの一部分
浸かるだけなのに
頭から丸ごと
吸い込まれ
我を失う
ぬめる祠の
虜になって
ひたすら振り続ける
パンク寸前の風船
獣の意識は中空に

美味しい部分から
食べ始めると
最初の方や
結末直後を
表に運ぶのが
面倒になるし
見ていても
つまらなく感じる

幾ら他人のセックスに
興味があったとしても
読み飛ばして
大事な場面を
先に見て
ヌいてしまったら
瞬間に興味は
プツリと失せる
どんなに濃厚な物語でも
一気に色褪せ
幕を閉じる

幻想を脱がして
唇を奪い合い
舌と舌とを絡ませて
ミルクを飲むように
首筋をぺろりぺろり
柔らかさを
十二分に味わい
全身の皮を
少しずつ剥いだ後
自身の中身を啜らせる
それから

空洞になって
落ち着いてから
気が付くらしい
奥の方で
ヒリヒリする痛み
分からないから
優しくキスをして
笑ってやる

天国を過ぎると
急降下
頭の中は
トぶ前より
ずっと鮮明で
熱を奪われ
牙が萎え
急に
おとなしくなる獣
眠りを妨げられ
突き放したくなる衝動を
必死に堪え
抱き締める

もう何も言うな
この胸の中で
安らかに眠れ

2005/12/09 (Fri)

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