詩人:高級スプーン | [投票][編集] |
小降りの雨
小振りの果実
傘はささなくても平気
けれど少しは濡れる
柔らかい土の上
平熱よりも微かに
冷たい二人
向かい合っていた
しとしとしとしと
湿る空気
ドクドクドクドク
高鳴る鼓動
一コマのサイレント
片方の口だけが動く
昨日の夜を
思い出しながら
静けさに紛れて
寂しさに敗れて
体育館の裏
いつかは腐る
僕が見ていた
後ろ姿
駆け足で
右曲がりに失って
お話は終わった
どんよりとした
重い空虚
思い切り深く
吸い込んだ
苦しくなって
少し軽くなった空虚
むせながら吐いた
足を凍らせて
追えない理由を作り
魂抜けて
残る塊
そして
今日に至る
同じ輪で話す時は
嘘偽りで
魅せたくて
どんな時でも
本当は
笑っていなかった
慣れない化粧に
苦笑い乗せたり
綺麗になりたいと
はにかんだ君
同じなんだと
感じたなんて
今思えば
笑ってしまう
本当に
笑ってしまう
降りしきる雨の中
夕暮れを背景に
傘もささず二人
あの時も
黙り込んでいた
悲しげな顔をして
何か言おうとした
僕の手を強く握る君
そして
勘違いは始まった
暗い海に浸かり
淡くなる記憶
回想する日も
少なくなった
あの場面だけは
君のようには
消えはしない
そう思っていたのに
色も味も本当に
合っているのか
分からない
コツコツコツ
スーツを纏い
舗装された路を歩く
諦め悪く振る雨
誰の真似だよ
傘はささなくても平気
あの日の真似だよ
劇的な変化は無いが
カシャカシャと
変わるシチュエーション
失ったものを
見つけても
きっと
元には戻らない
この雨も違う
場所も違う
僕の手を強く握るのも
君とは違う別の人
それでも続く
静かに降り落ちて
進む
それぞれのストーリー
体育館の裏
チャイムが鳴って
都合良く解ける足
踏み出す一歩
早く教室に戻らないと
いつの間にか
雨は止んでいた
明日も降るらしいけど
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