詩人:カラクワト | [投票][編集] |
炬燵の角に小指をぶつけた。
あんまり痛くて涙が零れた。
君がいなくなった
あの日
一滴だって出なかったのに
あんなに悲しかったのに
泣きたくなったら出てきてほしい
悲しくなったら出てきてほしい
おねがい。
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探したものは見付からなかった
それはもとから
なかっただけかもしれないし
探されたものは出会えなかった
それは気付かなかっただけかもしれない
望みに臨んで
益体もなし
けどまだ 探そう
まだ欲しいうちに
まだ探せるうちに
体をたてに
夢をかてに
全てが
報われるまで。
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例えば、死ぬ間際。
死ぬな、死ぬなと言われるより
生きろ、生きろと囁かれたい
例えば、恋人に
好きか、好きかときかれるより
好きだ、好きだと言われたい
言葉って人間の些細だ。
でも人間に顕すものは大きいんだよね
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がんばって
がんばって
がんばって
ダメだったら
踏みつけて
めぐりめぐる
目眩の中で
手はつながない
肩にかける
下を向いて上を目指す
螺旋の塔は止まらない
螺旋の塔は終らない
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もう終わったと
いうきみは
まだ始まってない
種のまま ただおちているだけだろう?
幕をひらけ
情熱をうつせ
回らないフィルムに
手をたたく彼はいない
暗い土中にかじりつけ
始まる前に終りは来ない
それはただ
いつ やめるかだ
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そのことに
気付かないように
気付かないように
してきたのに、
結局気付かなかったのは
誤魔化しを始めた時点で
そのことに気付いていた
ということだけだった
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なぞる。なぞる
ゆびでなぞる
ゆびの先で きれいになぞる
なにかを示すためにか
すりきれて痛くなった指には
赤がにじむかも、知れない
それでも何かが
消えないように
爪を立てたい 衝動を
かろうじで おさえ
なぞる。なぞる
それは、模倣。
だけど明日もめげずに続ける
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黒の安寧に揺蕩う。
真暗に裂いた 毒の臭いが
正しい未知だと識っている
だけど 照らさないで。
あらわにされる
腐ったうでを
―いまはまだ みたく ない
だから今日も闇のなか。
これからさきも夜のウミ
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ある孤島の白浜で
ひとりの老人を見掛けた。
彼は一心に木片を
小刀で削っていた。
死を、刻んでいるんです
尋ねた私にそう答えた
―誰のものか
―何のためか
それならば、
お持ちの品より良く切れる
ナイフを差し上げましょうか
と私が言うと
彼は、要らないと目を伏せた。
何故かという問いに一言
私がそう思ったから
とそっけなく呟いた。
しかし、気が付くと
声の主は少年で
先の老体は何処にも無かった。
―それが孤島の性格だった
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私に向かって犬が吠えた。
うるさい、と怒鳴っても
鳴きやまないから
大声で 腹の底から叫んでしまった
子供らは笑い
相も変わらず犬は吠える
しかし誰が気付いただろうか
私の顔面は
赤く歪み
目には泪
それは白色
白痴のような
虚無の悪あがきだった