風の時間微かな 肺の痛みに復た 繰り返す 秋の悲しみに肖た 単音の雨音。ピアノを弾く一瞬の指のもつれにひび割れた室内の大気の磁器。生存という極めて危うい均衡の中で急速に 摩耗する風の予感。ふいに時間が乱れかつて存在した者たちの蒼白の息吹がよみがえる時――父が語らうように 父が鍵盤の隅に 立ち現われる――
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