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猫の影の部屋  〜 投稿順表示 〜


[473] 暴く。
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周囲は風

舞い上がるだけ

はなにつく声

耳を撫でる、ただそれだけ



目は虚ろで

耳は塞がれ

口は開いているだけ

見ることも

聞くことも

黙ることもしない




誰かがどこかで死にました

あぁそうですか、知ったこっちゃない

誰かがどこかで死にました

へぇそうですか、もう結構です



2009/02/25 (Wed)

[474] 渇く。
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君がでかい荷物抱えて扉を開けた

それをただ見ていた

僕は見ていた

それだけだった



特に関心はない



流れ出した

それは何かを洗い流した

押し流した



幾ら溢れ出したところで

いつかは丸く納まって

大団円を描くんだろ

どのみち乾く痕さ

永くは続くはずもないんだ






積み上げた長方形は

他愛もない悪戯で崩れ去った

笑えてしまうほど呆気なく



guraguragatagataguraguragatagata…



幾ら滲み出したって

結果は当て布で覆い隠して

また転がりだすんだろ

どのみち乾く運命

特段たいした意味はない

だろう



guraguragatagataguraguragatagata…



幾ら零れ出したところで

結果は当て布で覆い隠して

いつかは丸く納まって

また転がりだして

大団円を描くんだ





どのみち乾く痕さ

永くは続かない

そうだろう

2009/09/20 (Sun)

[475] 形。
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「思ったより女々しいのね」

なんて言われたから、

全く白けてしまった

薄く濁った瞳で君を見ていた



細くて長いタバコをくゆらせて

彼女は奇妙に微笑んだ

「人間の脚のようだ」

タバコの話さ



この馬鹿げた掛け合いに意味を求めているわけではない

煙の「形」みたいな世界さ

君の無意味な笑みにだって、奇妙なだけで「形」なんてないだろう

濁った視界に浮かんでいた





手元の液体に口を付けた

動物の味

君がまた微笑んだ



2009/10/26 (Mon)

[476] 聞いた話。
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ロランが言った

作者は死んだ

ミシェルはそれじゃ納得できなかった

できなかったらしい

どこかで聞いた話

聞いた話さ



ヨーロッパのある町の

ヨーロッパのある駅で

陽気なラッパが今日も鳴る

陰気なインキも酔っ払う

含み笑いはもうよせ



ジャックが言った

どいつもこいつも嘘つきだ

ミシェルはやっぱり納得できなかった

できなかったらしい

どこかで聞いた話

どこかでした話さ

2009/11/14 (Sat)

[477] かおり。
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移り気な心が思い出したように言った

忘れたつもりだった

忘れたつもりだった



虚偽が真実になることなんて、人の死ぐらいありふれたことさ、どうということはない

今はもう、

忘れてしまった

忘れてしまった




時がなにもかもを洗いざらい洗い流したから、どうというわけでもない

ただすこし、香りがしただけ

そう、それだけのこと






それだけのことさ

忘れてしまった

忘れてしまった

2010/01/04 (Mon)

[478] カレー。
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あの赤いアレを切り刻んだ

切り刻んだんだって

あの茶色いヤツに刃を向けた

どうしたってそうなってしまう

油を引いて炒めるってなってしまう

そう、SO,炒めろ炒めろ


芯まで火が通った

芯まで腑抜けにされちまったって

水ぶっこんだ、ぶっ込むんだ、もうどうしようったって仕方ないや

ふつふつと沸き上がった怒りかそれは何か

あの四角いの、あの四角いの投入、ほら溶けていく

あとはもう煮込む、結局はそうなってしまう

だからもう、そう、煮込め煮込め

煮込め




鉄は熱いうちに打てというだろう、というだろう

そう、いうだろう





カレーも結局はそうなってしまう

2010/03/31 (Wed)

[479] メフィストフェレスの歩く夜。
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夜に目が覚めた

嫌な夢だった訳ではない


先週知り合った女から手紙が届いた

どうしても逢いたいそうだ

どうしても逢いたいなら、どうにかしてあえばいいのに

他人まかせにしていることに、当人は気づいちゃいない


風が窓のガラスを叩いて

勝手気ままに部屋を出入りする

塞ぎたくてもふさげない隙間が、そこかしこにあるんだろう

強情で、傲慢な、その心




目を閉じた

世界はあいも変わらず真っ暗だった

2010/04/07 (Wed)

[480] 五月の薔薇。
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もし世界が終わりを迎えたらなどと、

しようもない事ばかり考えていた

考えていたもんだ



もしや自分は自分じゃないのではと、

しようもない事ばかり

ばかり考えていた



いつか花は開くのだろうと、君は遠くを見て言った

オフィーリア、いつも美しく微笑んでいる

そして風景はにじむのだろう







もうそれは届くはずのない手だと、

どうしようもない夢の話を

話を思い出す



いつかその瞳は閉じるのだろうと、君は空を見て言った

オフィーリア、水面に漂う髪が透ける

そして大気は流れ込むのだろう





いつか散るその花の名前は、思い出せなかった


いつか笑える日が来るのかしらと、君はこちらを見て言った

オフィーリア、優しいその手が頬を撫でる

そして視界はたゆたうのだろうか


そしてオフィーリア、君は

2010/04/18 (Sun)

[481] Gratia.
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手元の煙草に火をつけた
ため息が形をもった

涙はどうもあたしには合わないわ
そう言ったあの日の女は泣いていた
星のない夜だった

笑ってやり過ごせることばかり
そのはずなのに
大変遺憾ながらうまくはいかない
声は掠れて走り去る喧噪が連れ去って行った


足元の石は素敵だった
拾われることを拒んでいた

そういえばあんただれだっけ
そう言ったその女は嬉しそうだった
形容できない笑みだった

許容できない矛盾をやり過ごす
それはできていたはずなのに
誠に遺憾ながらうまくはいかない
大変遺憾ながらうまくはいかない



気付けば自分も微笑んでいた
その矛盾を許していた



愚かな不合理を書き散らした
それはできない相談のはずだった
誠に遺憾ながらうまくいってしまう
大変遺憾ながらうまくいってしまった


女の頬の涙の跡がやけに美しかった


2010/05/08 (Sat)

[482] Salvatio.
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わざわざ刳り貫いた夏をトーストにのせた
喧しい蝉の鳴き声が耳についた

さよならを言われる前に、と女はいった
こりゃ失礼、そう男は言った
そんな簡単なもんならよかったのに

うだるような暑さをスープに混ぜた
やたらと塩っ辛いんだ
だから夏は嫌いだ
ライ麦畑は1人で行ってくれ


私じゃなくっても、と女は言った
そんな気も、そう男は言った
そんな簡単なもんな訳もない

五月蝿いくらいの日差しをミルクで薄めた
生温くって飲めやしない
だから夏は嫌いだ
砂糖黍なんか見たくもない


夏をわざわざ刳り貫いたっていいことなんてありゃしない
わざわざ、にはいいことなんてあるわけない
お手並みは拝見済み


さよならを言われる前に、
私じゃなくっても、
わざわざそんなこと言わなくっても、
おっとこりゃ失礼、
そんな気も、
そんなこと言っても何もわからない


何も見えやしない

2010/05/13 (Thu)
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