詩人:猫の影 | [投票][編集] |
わざわざ刳り貫いた夏をトーストにのせた
喧しい蝉の鳴き声が耳についた
さよならを言われる前に、と女はいった
こりゃ失礼、そう男は言った
そんな簡単なもんならよかったのに
うだるような暑さをスープに混ぜた
やたらと塩っ辛いんだ
だから夏は嫌いだ
ライ麦畑は1人で行ってくれ
私じゃなくっても、と女は言った
そんな気も、そう男は言った
そんな簡単なもんな訳もない
五月蝿いくらいの日差しをミルクで薄めた
生温くって飲めやしない
だから夏は嫌いだ
砂糖黍なんか見たくもない
夏をわざわざ刳り貫いたっていいことなんてありゃしない
わざわざ、にはいいことなんてあるわけない
お手並みは拝見済み
さよならを言われる前に、
私じゃなくっても、
わざわざそんなこと言わなくっても、
おっとこりゃ失礼、
そんな気も、
そんなこと言っても何もわからない
何も見えやしない