詩人:そほと | [投票][編集] |
働く最低限の機能以外は
風化するままの姿をしたブルドーザーは
昔 洗炭場だった所の
元 人工の池を一つ埋めかけて
今日の仕事を終えた
夕日に照らされ
これから夜に向けて静かに熱を放出しながら
ただの鉄に戻ろうとしている
タンクローリーの古い男は無口だった
上死点と下死点
ディーゼリングによる連続爆発を維持させるための
燃料を流し込む手持ち無沙汰な時間の空白に
池の魚が跳ねた
古い男のプラグコードはリークしていた
青白い火花が飛んでる
奥歯でアルミ箔を噛んだような顔を一瞬見せた
明日
池は消える
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エンドウは
その花びらで宙を舞う夢を見ていると思う
私もせめて
寝顔ぐらいは微笑んでいたいと思う
夕べはどんな夢を見ていたのと
聞いてくれる微笑み
募集中
詩人:そほと | [投票][編集] |
ただの太った色白のオバチャンだったんじゃないの
と その時は冗談で返しはしたが
それ以来そのウワサは聞かない
「 八木山峠に雪だるまのユーレイが出る 」
暑い夏だった
いい年をしたおっさん同志が
汗をたらしながらの話だった
どんな顔をしていたらいいのか
判らないままの話は立消えた
死んでから化けて出るのがユーレイ
オバケじゃないんだ
だから許せた
だから覚えてた
「 八木山峠に雪だるまのユーレイが出る 」
それ以来そのウワサは聞かない
年々去年より暑い夏
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熱帯夜の田圃はというと
月が映らないぐらい稲が伸び
カエルの喧騒は下火になり
さりとて虫のオーケストラはまだ準備中
滞った水は其処に棲むもの達には優しく
彼等の体液と老廃物と排泄物を腐敗させ発酵させ
涼を呼ぶために開け放った窓から私の鼻腔へと
臭気を運んでくる
熱帯夜の田圃というやつは
カエルの祭りの名残と
虫のオーケストラのリハーサルと
伸びた稲と
月も映らない暗い水面と
ごちゃまぜで秩序立った生活が営まれているに過ぎない
熱帯夜の私はというと
眉根をしかめながらの鼻呼吸で
どんな夢をみるやら
どうやら私
生活を嫌悪しているふしがある
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みそ汁に見るブラウン運動は
ブラウン運動は
人がコトバを話さざるを得ないに似ている
ないに似ている
立ち昇る湯気の一粒一粒が遠ざかる星々とすれば
々とすれば
神の発した一言が
ことが ことが
ビックバン
クバン クバン クバン
その一言は
「 うまい 」
「 」 「 」 「 」
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かえるが鳴かなくなった
かわりに鈴虫が鳴いている
さて私は鳴いているか
始めに鳴いたのは間違いの無いところだが
その後鳴いたか
ちゃんと鳴いて来(こ)なかった気がする
こんなことを独り考えていること自体
あきらめた方がいいな
いずれ 鳴く日が来るだろうか
だとしても
もう かえるのようには鳴けまい
鈴虫のように
鳴いて終わるか
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心が曲がって 口が曲がった
心が歪んで 骨格が歪んだ
いつもより早く目覚めた朝
昨夜閉めそこなった窓から吹き込む風に
顔をなぶられながら
軽い耳鳴りと 些細な吐き気
お気に入りのおもちゃ 握り締めていたのは
右の手 左の手
それすら解らねば
怨み辛み呟く相手は自分しか無く
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詩人の目というものは存在せず
すでに比喩であるならば
詩人も存在せず
すでに比喩であろう
詩は五感の届かぬ処すでに満ち溢れ
五感を超越して常に感じ続けている
後はアンテナの方角にバリコンの調整
文字への変換と云う機械作業だ
ならば ならば
具体的な私と云うものは
そこにどう関わっているのだろう
どう関われば良いのだろう
ススキ枯れて
セイタカアワダチ草醜く枯れて
雪が全てを美しくして
私は私は見付け出せるだろうか
私が固体を持つ以前の詩で在った私を
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人工の光に隠れ切れずに
見える月は可哀想なもんだな
(お前にも一杯奢ってやる)
昼間の明るさにも隠れ切れずに
見える月は可哀想なもんだな
(密閉型の耳栓を貸してやる)
秋の終わりの小春日和にやっと
羽化した蝶々も可哀想なもんだな
(墓はビニールハウスの中でいいかい)
後悔映し出せない
鏡も可哀想なもんだな
(紙ヤスリで擦られているらしいな どうも)
面倒臭いから昨日の残り湯
いい加減だから
沸かし過ぎてうめ過ぎたぬるい風呂
明日 熱を出す予定
(ずる休み)