詩人:そほと | [投票][編集] |
青が好きだったぼくは
緑を好きになり
黒が好きになっていました
お母さんの声を思い出していました
お父さんの声を思い出していました
お婆さんの声を思い出していました
お爺さんの声を思い出していました
妹の声を思い出していました
今は白が好きです
詩人:そほと | [投票][編集] |
足りない足りない
足りないが足りない
今は何でも有るから
足りないが足りない
欲しい物は無いから
物じゃないものが欲しい
足りない足りないの時代には
物じゃないものに溢れてた
物じゃないものは幾らでも有った
空気と同じ分だけ有った
それでみんな息してた
足りない足りない
足りないが足りない
でも息してる
それでも息してる
でも
物を吸っているんだよな
詩人:そほと | [投票][編集] |
4Bのチビたえんぴつで
ひらがなを書くのがすき
かすれて やわらかな ぼやけ方がすき
ただね
下敷きは敷いちゃいけない
眠れなくなるからね
シンは尖らせちゃいけない
夢が覚めてしまうからね
蛍光灯が反射するシンの鈍い光を
眉間の鍵穴に差し込んだまま
大人になった
詩人:そほと | [投票][編集] |
観音堂の水は
予想外に甘く
それは物質外で初めての
実体を伴う甘さで
観音堂の水は
小さな湧き水で
一人用の大きさしかなくて
歪なひしゃくなど置いてあって
古戦場の故事など読んできた私は
( いいえ たとえ読んでいなくても )
心細く屈み込んでいて
奉られているのは
千手観音で
水を飲むにしても
ふさわしい手が在るのだろうな
私には2本の手しかないので
この手で飲んだのだが
おこなえば
それがふさわしい在り方だと
あの甘さは千手観音の
微笑みだったのだな
詩人:そほと | [投票][編集] |
父の貰ってきてくれた赤い三輪車が
大きくて乗れないので泣いていた
その写真を大人になって見つける
寸分違わぬ感情と光景が
生で残っている事に気付く
もう一度泣いてみるか
近頃過ぎ行く時間が速過ぎる