詩人:そほと | [投票][編集] |
無風
夕立で冷やされた夜気が這い込んで来る
それは体に染み込み
代わりに私が染み出して行き
体は眠る
無風
静かに稲妻が走り
遠く他人事のように雷鳴
昼間見た田圃では
勢い良く伸び始めた稲達が
力強い矢印となって天を指していた
つられて見上げた其処には
確かに何か在りそうだった
無論
私には見えるはずも無く
見えようはずも無く
すぐに忘れてしまったのだが
持って帰って来てしまったのだな矢印
静かに稲妻が走り
遠く他人事のように雷鳴
矢印の緑を噛んでみる
さらに 無風
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ポーチ・ド・エッグを作りましょう
なぁ〜に 見ていればいいんです
あの月にもうすぐ雲がかかる
あれなら貴方様にも食べられる
さぁ どうしたんです
あぁ やっと食べ始めましたね
ははぁ 固ゆで玉子がお好みでしたか
だいだらぼっち様
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水芭蕉
乾いた心たちは
水を求めてそなたに出逢ったのだろう
水に口をつけ
沁み込む透明に安堵して顔を上げれば
真白き佛炎苞の
そなたが居るのだろう
水 清きかな
光 清きかな
吾等は思い出さねばなるまい
羊水より出でてタオルに包れた日の事を
未だ 水 清きかな
光 清きかな
さあ
心 清くあれ
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春はまだ浅く
気の早い一叢のれんげは
まだ半透明の花
まだ半透明の茎の上で
気の早いひばりの歌を
やわやわと聞いている
ふっくらと緩んだ地面は
影も光も吸い込んで
次の色を創っている
春は何処からも来ず
ここで生まれていた
大地が大きく息をした
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わっ!!
あたふた あたふた
おろおろ おろおろ
こそこそ こそこそ
ごそごそ ごそごそ
掘り掘り
潜り潜り
もういいかな
わっ!!
掘り掘り
潜り潜り
まだかな
きっとまだだな
まずダメだな
ずっとダメだな
いつまでたってもキライな自分
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夜の祭りは悉く
水溜りの中に履物の底を見せて通り過ぎる
テキヤの声も
水飴の様な唾液を伴う男女の声も
全て向こう側だ
両親にぶら下がって越えて行く子供が
此方を見た
私が見えたか
見えたかもしれない
なぜならば
私は胎児の様に縮こまって居るしか出来ないからだ
祭りの花火は大き過ぎて
大き過ぎて全ては見えない
美しいのだろうな
どれ
も少し水溜りを広げてみるか