詩人:高級スプーン似 | [投票][編集] |
四半世紀
投げ打って
帆布に絵筆を走らせる
油まみれの
キャンバスライフ
痩せこけた頬
友達のいない貴方
血管浮き出る白い細腕
見つめ合うのは
ふくよかなヴィーナス
好いねえ
一切を犠牲にして
一生苦しみ続ける行為
真正面から味わって
幸せそうな横顔見せんな
危絵の中で謳歌する春
丸みを帯びた背中に
抱く負の
鋭利な感情を
突き立てたくなる衝動
もう
耐えきれそうにないぞ
私の映らない瞳から今も
目が離せないでいる
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日本人なら箸を持て
だけどちょっと待て
カレーを食べるなら
スプーン
パスタを食べるなら
フォーク
おにぎりは
手掴みで食べたいんだなあ
つまりはそういうこと
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降り積もる
枯れ葉は土に
雪溶け
芽吹く
春のあお
あんなに愛した女の顔も
思い出せなくなった頃
内臓の隙間から
聞こえてくる囁きだけが
忘れた人を
静かに告げているけれど
面影は
埋め立てられて
姿形を変えていく
貴女の知らない
春が見える
語らう人もいない
内側からの
仄かな叫びも
聞き取れないが
まだ
感じることができるのなら
ひっそりと
生き続けているんだろう
青い春
真下に眠る
蜘蛛の子
いるか
人のくろ
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私が
私に気付いた真実は
あなた方にとって
「違うよ」
「そんなことないから」
「だから元気出して」
否定されるもので
相容れないものだから
いつまでも混ざらずに
ひとり浮いてしまう
でもね
私が
私から目を背けた時に
気付いた現実は
「私は要らない子」
「つらい」
「死にたい」
浮かんでいるのは
ひとりじゃないってこと
手を伸ばせば
届く距離に
「ひとり」
「ひとり」
「ひとり」
沢山のひとりがいた
必要なのは
ほんの少しの
勇気と努力
どちらにしても
苦しいのなら
手を
念じたけれども
ダメでした
自分自身を
追い詰めて
出来ない自分を
問い詰めて
私は今日も
「ひとり」
いっそ沈んでしまいたい
でも
その前に手を
おあいあい
おあえあい
ああ
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あとで
どうにかしようと
大事にとっておいた
なまもの
腐っていた
においはキツいし
見た目もグロい
これじゃあ
さっき叩いたアイツと
大差ない
もっとはやくに
気付いていれば
こうはならなかったのに
ぶつくさと道草し
同じ道を繰り返し
繰り返し何度も
繰り返し
腐乱死体が歩いているよ
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一階から
笑い声が聞こえてくる
眠れないから
騒がないでくれ
別に
気にしてないけれど
トントントン
階段を上がる音
近付いてくるのは誰だ
あっちいけ
コンコンコン
ドアを叩く音
おれの名を呼ぶのは誰だ
あっちにいけよ
ハハハハハ
家の外から
聞こえてくる笑い声
近所迷惑だろうが
戻ってこいよ
ハハ ハハ ハ
遠ざかってく笑い声
どこへ行くんだ
お前たち
ああやっと
静かになった
これでぐっすり
眠れるぞ
騒ぐ声は聞こえない
ドアを叩く音はしない
ハハハハハ
笑っても反応がない
ハハハハハ
ひとりになったぞ
ハハハハハ
諦めるんなら
最初から誘うなよ
もう絶対に
かまわないでくれ
戻ってくるなよ
絶対に
ハハハハハ
ハハ ハハ ハ
静かすぎて眠れない
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勝てない口喧嘩
秒速・地球を七回り半
それでも
わたしには夢がある
あなたの嫌いな感情論
泣いて笑って
騒々しくも
はいすぴヰどで創造し
光の速さを上回り
あなたの理屈を凌駕する
いつか
そう いつか
無理か
・・・ぐすん
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生暖かい三月
頭を抱えながら
テーブルに肘をつき
犬のように
どんぶり飯を
頬張るおばちゃん
片隅にショートホープ
ちらかしすぎだぞ
ご飯つぶ
遠い目をして
耳を塞いだら
少しは
気も紛れるのかな
灰皿に溜まるホープ
最後の一本と
頼んだ瓶ビールは
どちらも一口呑んだだけ
生暖かい三月
厚着で出掛けて大失敗
でも
春と呼ぶには
まだ早いか
汗ばんだ午後も
夕日が沈めば薄ら寒い
夜になり
ぬくもりが恋しくなった今
気付く
昼間のおばちゃんは
あの場所で
静かに
待っていたんじゃないか
頭を隠して
天使のように
プリマヴェーラの訪れを
片隅に長くて短い
希望を置いて
背中に生えた
翼で羽ばたく
全裸のおばちゃんを
想像してしまい
飲んでいたお茶を
吹き出した
最悪だな
でも
久しぶりに笑ったなあ
携帯のストラップ
小さな羽のある
赤ちゃんが揺れ
また吹き出した
三分も続かない
ショートホープ
次の日
風邪を引いたしな
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心の声は
ヘッドホンでは防げない
当たり前だけれど
あの角を曲がっても
ヘッドライトが眩しいだけ
君はいない
天国も地獄も
信じてはいないから
そこから先は無
何もない
もう二度と出会えない
でも
寂しいから
耳の奥まで
音楽を流そう
そこから先に
何もないのなら
ここから先に
君はいないのか
流さない涙
それならまだ
生きていたい
ヘッドホンをして
目をつむる
心に抱けば
君がいるなら
思い出
後ろ向きなら
いつでも会える
それじゃあいけない
わかってるよ
でもね
わかってないよ
泣けないけれど
伝うものがある
それに
もうすぐ終わる
ヘッドホンを外して
目を開けたら
君はいない
わかってるから
少し黙れ