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高級スプーン似の部屋  〜 投稿順表示 〜


[560] たばこ屋の角をサビ抜きで(余り)
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ここ十と余年の記憶
何かの拍子に
消し飛んでしまっても
今の私は変わらない
きっと
支障を来さない程度の
些細な事象でしかない
現実から離れたくなった時
逃げ込む場所が変わるだけ

非常口の先を行けば
辿り着く部屋
空白広がる空間に
思いの丈を打鍵する
喜怒哀楽が爆発したり
ひたすら空虚を羅列したり
あなたとどなたの言の葉の
隙間の彼方に列挙する
枚挙に暇がないわたしの
産み落としたそれら
果てのない創作の場に
顔も知らない人たちが集った

ハハハッ
もう十年以上も経つのか
乾いた笑いしか出ない
いや無表情に
文字を打ち込んでいるだけだ
何が起こって
何が起こらなかったのか
未だに
どんな顔をしていいのか
わからない
これ以上は記さずに墓場まで

結局
アイツは何重人格だったのかとか
哲学者は次いつ現れるんだとか
解決しない問題もそっちのけ
どれだけ感傷的になろうが
現実には干渉してこない不可思議
あなたともどなたとも
決して浅い関係ではなかった筈なのに
けれども深くは交わらずに
深夜
暗い部屋でひとりぼっち
残りの寿命を貪るように作り上げてきた

ここ十と余年の記憶
何かの拍子に
消し飛んでしまっても
今の私は変わらない
あなたとのどなたとの
思い出も一匙程度のもの
たばこ屋の角を
すっと曲がるように
今わたしが聴いている曲の
サビを過ぎれば忘れてしまう
その程度

普通で終わり
何も特別なことなど
始まらなかった日常
気が狂う前に
今も足を運ぶ場所
ふと思い返せば

何かが変わるほどではない
けれど
消し飛ぶまでは片隅に残る
そんな十と余年の記憶




10y

2016/04/08 (Fri)

[561] 二人のリレー
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学校帰り
自転車に乗って
病院へ行くのが日課だった
同じ高校への合格が決まった直後
体調を崩して
入院したきみに会うために

賢治も詩を書くことも好きなんだ
だから一緒に書こうよ
なんて
いきなり誘われても困る

教科書でしか読んだことないし
書けないって言ってるのに
「時間よとまれ! やっぱとまるな!」
国語のノートにそれだけ書いて
続きを書いてと手渡されても

屈託なく笑うきみは
病人には見えなかったし
それは
ぼくのノートだし
仕方なく続きを考えた

一行書いてきみに渡し
一行書いてぼくに戻っての繰り返し

春には定番
桜の下で出会う
新しき日々の詩を書いた
教室にきみはいなかったけど
病室でぼくらは
沢山の出会いと別れを書いた

夏には海
それから花火に
バーベキューの詩も
病室のテレビで観た
高校球児たちの熱い闘いを
描いたこともあったっけ

二人で交互に一行ずつ
鉄道のレールのように書き連ねる
病室から
銀河の果てまでも
どこまでだって
行ける気がした

秋には紅葉
落ち葉を燃やして作る
焼き芋の詩も書いた
窓から見える
あの木の葉っぱが
全て散ったら
わたしの命も・・・
笑えない冗談だったけど
つられて
笑ってしまったな

お芋を食べてぷっぷぷ〜
そんなふざけた一行を書き
雨にも風にも負けない笑顔
そのあと
体調が急激に悪化して
本当に命を落とすなんて
思えなかったから

冬には詩を書かなくなった
結局
どこにも行けなかったんだ

あの日の病室
ふたりでいた時間は
記憶の中でだけ停まったまま
先には進まないでいる
「時間よとまれ! やっぱとまるな!」
初めて完成させた二人の詩
どんな続きを書いたのか
思い出せないのはどうして

あれから十年
銀河の果てから折り返し
再び巡り逢えはしないか
時々立ち止まっては考える
「時間よもどれ! もしくはすすめ!」
込み上げる想い
病室での日々を思い出して
もう一度
ノートを開いて書き出した

いま一度
前に進むため
伝記にもならない
短い生涯を終えた詩人に向けて


今度は
ぼくが手渡す番だ





10y

2016/04/21 (Thu)

[562] 君とスタンプラリー
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君が笑っている時
私はどんな顔すればいいのか
わからず無表情

記号化された現代社会に
当て嵌められる
『いまのきもち』が
全然なくって

こないだ買った
可愛いスタンプも
未だ送れずにいる

文字を打つのも面倒だ
記号化された云々かんぬん
だとか
うるせーよバカ

あれこれ小難しく
考えなくていい
君とスタンプの応酬
したいだけなのに

私は既に読んでいる
でも返せない
この気持ち
表すスタンプ
どこにも販売していない

(・_・)

君が好き
伝わりますか
これで私の・・・

(・_・)

怒ってる?

(・_・)

怒ってないよ

(・_・)

眠いの?

(・_・)

ちょっと眠いけど

(・_・)

なんでその顔?

(・_・)

なんでって・・・

(・_・)

ほら
やっぱり
伝わらないなう

私の今の気持ち
鈍感な君にはさあ、

(・_・)

わかんないけど
可愛いね☆

(・_・)

・・・

(//_//)

スタンプ打つの
疲れたから
おやすみ!



www

2016/05/04 (Wed)

[563] 一本でも人間
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ある人は云った
カタナ一本あればいい

ある人は云った
マイク一本あればいい

ある人は云った
チンコ一本あればいい


ヒップホップ
AV男優
なんだって
自信と自身と一本あれば
兵になれる夢のよう

けれども
あとに残すには

社会的弱者が握ったペン一本
俺を知らない
ある人の
記憶に残すには

自信は要らない
自身も要らない
一人ひとりが握る一本のソレ

お前だけの一本を聳り立たせろ



2016/05/08 (Sun)

[564] えぬ
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昇る朝陽 沈む夕陽
夜が来てまた朝が来る
一日が過ぎ
一週間一ヶ月と月日は流れ
春夏秋冬 変化する四季
一年は過ぎ十年数十年
一世紀も経てば
景色も景色を目にする生物も変化する
移ろう地球の上
「変われない」という嘆き溜め息は
どれほど無意味なのか
無為に過ごし無意識に
漠然とした不安を感じても仕様がない

ある日
ぴたりと時が停まった
地球は太陽の周りを回るのを止め
自ら回転することも止めた
太陽が消失したならば
足元からすべては凍りつく
四季のない北も南もない一個の巨大な氷塊に
万物は成長するのを止め
思考停止 心を閉ざした
時が停まり 変化のない
輝きもクソもない暗闇に包まれた世界
ただ
意識だけが
あったなら
「変わりたい」と思うだろうか

季節があれば夏らしい
吐く息があれば白いかもしれない
時のない場所
在りもしない妄想だ
足元を見るまでもなく
氷の女王は存在しない

震えても
震えても
熱は上がらない
冷えきった思考
動かない足
凍りついてもいないのに

昇る朝陽 沈む夕陽
漠然としていても進む日々
過ぎる時間
思いやりのない得体の知れた生物は嘆く
昨日も今日も恐らく明日も

「変われない」

業火を舐めるのは先の話だとしても
ここは地獄と相違ないな




2016/05/20 (Fri)

[565] 首なしホロウに口づけを
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自分の首を絞めるくらいなら
その首刈り取って
肌身離さず持ち歩けばいい
いままで手に入らなかった大切なもの
探していた自分がそこに在る
生きているとは言えないが
死に急ぐよりはるかにマシだ
これ以上
言葉にしても蛇足になるけれど
蛇の足など本来在りもしないもの
だったら
在りもしない話を語られて
頷くお前のその首も
さっさと刈り取った方がいいかもな

お互い首を差し出して
虚ろな顔同士
口づけすれば
照れて真っ赤な嘘になる

それこそ
B級ホラー
みたいなお話に


2016/05/23 (Mon)

[566] 修羅ん
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人はいつか死ぬ
どれだけ頑張ろうと
絶望は免れない
回避できないバッドエンド
だなんて言い方をすれば
14歳の考えた何かの設定みたい
それでも
前を向いて必死に生きる姿に
胸を衝き動かされ
血潮を熱く滾らせたり
遠巻きに見下して
嘲笑う唇を噛んでみたり
これは受け継がれた遺伝子か
ちゅうがくにねんせいのかみ
奴の所業の為せる技かもな
どうせ意味はない
生きる価値はない
それならはやく楽になろうか
いま自殺することと
苦しみながらも生き抜いて
いつかの未来に死ぬことに
違いはないのかもしれない
それでも
けれども
but
バッドエンドでも
馬鹿みたいに生きたい
死にたい繰り返したい
わけじゃないけれども

拷問の最中
助けてたすけてたすけて
いたいいたいいたいいたい
いやだいきたいしにたいいたいいたい
くるしいたすけてしにたいもう
いっそ殺してくれと
加害者に逆命乞いしたあと
許されなくて
凄惨極まり惨たらしく甚振られ
筆舌尽くし難い絶望を味わい尽くし
意識の途切れる間際に
逝きたい
じゃなく
まだ生きたいと
必死に生にしがみつく人に
なりたい

恐らく
かみはいない
何もないその後より
どれだけ苦しくても
理不尽でも
神は居なくても
ここは天国

自己問答
自己闘争の果てに出した答には
丸も罰も要らない
本当はね

救われなくても生きて死ぬから
そんな顔、するなよ



2016/05/24 (Tue)

[567] 名もなき狂人のうた
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有名な詩人が
頭に思い描いて
書かずに破り捨てた詩
百万光年先からなら
その時の表情くらいはわかるかな

いつか
これまでに生きてきた人たち
誰も彼もの心の機微も
宇宙のどこかに保存されていたとして
頁を捲るように過去に遡り
自由に閲覧できたなら
もう何も書かなくてもいいよなあ

言葉がなければ息もできない
もしくは死ぬ
症状が酷ければ
そんな人もいるかもしれない
言葉がなければ
現実から言い逃れることもできず
ただただ口を閉ざしたまま
震える拳を宙に叩きつけるだけ

誰かに読ませるために書いているのか
それすらもあやふやで
子どもがはじめて画用紙に
クレヨンで書いたらくがき
みたいに人に伝わりにくいそれ
うまれたての感情を
昔ながらの心象風景を
誰に伝えるでもなく
思い思いに想いを描く行為
その姿
選ばれた未来の先では
好き好んで骨を折る狂人だと
ナンセンスだと肩を竦められても
此方人等
死に物狂いなんでい
そう言われたら
仕方ないよな

顔も知らない人の詩を読むこと
百万光年離れなくても
少しはわかるその顔つき
どこまで正確に読み取れるかは
わからない
けれど
あなたの詩を読まなければ
こんな風に
ぼくの心が動かされることもなかった
どんな風に?

それはまた未来の話






2016/05/26 (Thu)

[568] 理由は不透明
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名前を下さい
透明な存在に名前を下さい
教室に
街中に
会社に
家庭内に
社会の片隅に
またはお前の背景に
溶け込んでいるのに
ねえ こっちを向いてよ

何をすればいい
何を為出かせばいい?

もういいかい
まあだだよ
探してくれる人など
誰もいない
いないいないばあ
隠れるのはもうよそう
もういいよ
はやく見つけてよ
お願いします
名前を下さい
透明な存在に名前を下さい

大事な存在に危害が及べば
気付いてくれますか
反社会的な行動をすれば
社会的に承認してくれますか
この透明な存在を


 醜悪な毒虫の背中が割れて
 顕現するのは家鴨か白鳥か
 未だ割れない背中を
 鏡越しに眺めては嘆息する日々
 息も絶え絶え息苦しいのに
 息絶えない死に損ない
 報われない
 罅割れないから
 生まれ変わることが出来ない
 醜悪で透明な存在には
 未だ名前が無い



静かに立っているだけでは
気付かれないのかもしれない
頭の中では
堪え難い苦しみに
のたうち回っている
振り向いてくれるだけでいい
それだけのことが
どうして出来ないんだよお前は

名前を下さい
透明な存在に名前を!





2016/06/09 (Thu)

[569] 宇宙自殺
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解脱
生身から抜け出して
屋根まで飛んだ
そこから先は
科学の外
大気圏を飛び出して
月面でも跳んだ

解説
深呼吸をして
大きく息を吸い込んだ
その空気が
真っ青な毒だったら
苦しくて
重苦しくて
こんなもの要らないってさあ
私を
自身から引き剥がすように
殺すよね
意味がわからないって?
それこそが
真理

理解の外
生身から脱け出して
トぶんだ
銀河の果てまで

そうしたら
自殺しよう
それまでは
勉強しよう
今日の授業はここまで
続きは明日が来るまで
どうか無事でいて下さい

2016/06/16 (Thu)
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