詩人:高級スプーン似 | [投票][編集] |
手に入れたハズなのに
それらの行為
終わる頃には
失っていて
劣等感に猜疑心
羞恥心に嫌悪感
さっきまで
抱えていたものは
何ひとつ
落としていないし
消えてもいない
どころか
何かを得たような
受け容れられて
受け取ったものは
形のないソレ
なんだろうけど
おかしいな
確かに奪ったハズなのに
きみは
幸せそうに笑ってて
いままで見た
どのきみよりも美しい
まあいっか
言葉では表現できない
求めた先にある
技巧なき喪失感
なのに
満たされていく
子供じゃないから
子供みたいに
無邪気に戯れ合い
愛し愛
iとi
きみとひとつに
ひどく原始的な営み
それが最先端なのだ
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居場所があるっていいな
お金じゃ買えないもんな
友達や家族と一緒でさ
望んでも
いつでも手に入る
ものでもないし
遠くから見ているだけ
気付かれるのが怖くて
視線をそらしてさ
誰の目にもつかないところ
探して隠れるんだけど
本当は
そこじゃないんだよ
心のどこかで望んだ居場所
必要な時に
必要な場所
心休まる居場所がなくて
見つけたとしても
輪に入れずに
見なかったことにして
違うところ探してさ
バカだったし
いまもバカだ
どこにでもあって
どこにもなくて
それでもやっぱり
どこかにあって
そこにいるだけで
ほっとする
じぶんの居場所
今は何も考えない
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しんこうに没頭
ひきこもりの中年が
指導室に連行されて
母親は首を吊った
働きざかりを疾うに過ぎた
お父さんは言った
「これは何かの
罰ゲームですか?」
好きでもない女に
金を掴ませて
孕ませないで店を出た
それは精子の無駄遣い
そんなんで
生気を養えるわけもなく
手元にあるのは
帰りの切符と小銭
それから知らない罪悪感
私に試練を与えても
部屋から一歩も出ませんよ
身内に犯されたってねえ
明日があるさと
世界は希望に満ちていて
実際 朝になると
雀がチュンチュン
嘆くのです
公園の砂山
トンネル掘ったら
くずれてしまった
地球の底へと手を入れて
掴んだものは犬のフン
素顔だけが取り柄の
それこそがすべての
あなたが化粧をするのに
消費した時間を
他のことに使えたなら
明日のお昼は何にしよう
苦しむ行為が増えるだけ
歩くのすら面倒くさい
赤い夜
雲に隠れて月は見えない
いつまで経っても
終わらない
終わったことにも
傷付かない
ふりを最期まで続け
嘘ばっかりの変な死体
とどめは自分でさす癖に
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木曜日の三叉路
どちらに転べば
解放されるのか
選んだ先にあるトンネル
蜜柑の皮が
こたつの中で燃えている
そんな道が続く
隣のきみは
笑っているようで
他の誰にも
見られないように
表情を曇らせて
泣いている
ぼくはその手を
ぎゅっ、と掴んで
離さなかった
そうでもしないと
乖離して
白い蛇みたいに
死んでしまいそうで
結局
きみは嫌がって
離れていく風船の糸
高く跳んでも
届かなかった
そろそろ
みんなが眠る頃
それでも寝るには
まだはやく
照明の落ちた空に
手をかざす
合間を縫って
流れてきたのは
ひとひらの
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最もホットで
こだわりのある
巷で話題沸騰中な
とろうま極上の
濃厚純正
ふんわりしっとり
シンプルそれでいて
新食感の
売れ筋ランキング
他を大きく引き離して
堂々の第1位!
あのテレビ番組で
超大物芸能人が紹介し
誰もが絶賛した
有名店の人気スイーツを
食べたいな
だったら
甘くて心暖まるものから
冷たく心エグるものまで
お取り寄せしたら
いいじゃない
資格なんて要らない
理解せずに共感できる
だけど
わたしの気持ちは
誰もわかってくれないの
あなただけ
あなただけなの
信じられるのは
てんてんてん
それなのに
あなたは出ていった
今なら無料で配信チュー
盗作じゃないし
パクってませんよ
リスペクトからの
オマージュですから
だから
訴えられても
訴えかけてくるモノがない
なんて
言ってんじゃねェよ
目は節穴
鼻は利かない
声を失って
言葉も出ない
誰の耳にも入らない
君の心には届かななな
ネットの海にタイピング
繋がる先には
お前の部屋が
ノックをせずに
不法侵入
何も盗らずに立ち去って
残した足跡
いらぬ置き土産
帰り道
鍵を落として
途方に暮れる
夜明け前
夢を見る手前で
目が覚めた時
ふと思い出したのは
模倣しやすい
活字で描かれた
あなたの一面で
それは
わたしじゃないのにね
なんで一瞬
重なったんだろう
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とおいみらい
近い将来
人類は
彼女を残して
旅立ちました
ながいながい
戦いが
人類にとって
最も望まぬ形で
終結しました
けれど
それを
彼女に報せる者は
この世にはおらず
頑強なシェルターの中で
彼女はひとり
恐怖と戦っていました
戦いはいつ終わるのか
不安を煽る思考を止めず
彼女はいつまでも
苦しみ続けていました
水も食料も命も
当分尽きることのない
世界一
安心安全平和な場所で
彼女は永遠に近い
とても短い一生を
そこで過ごしました
カラダには
毒でしかないこの環境を
耐え抜けば
いつか副作用が
それもいい形で
私の元に
やってくるに違いない
そう信じて
彼女は仲間の元へ
旅立ちました
最後の最期まで
笑顔を咲かせずに
ながいながい
戦いが
彼女にとって
最も望まぬ形で
終結しました
荒廃した世界は
それからさらに
ながいながい
歳月をかけて
次第に息を吹き返し
それを知らずに
彼女は旅立ちました
シェルターの外では
色とりどりの花たちが
咲き誇っています
幸せそうに
仲良く風に
揺られています
とおいみらい
近い将来のおはなし
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実は
我が道にそれる方が
その場しのぎ的に
ラクな時もある
その後の行方を
知る者はいないが
定時に起きて
支度をして
定時に家を出て
定時に定所に着き
定時まで定事をして
定時になったら
家に帰ったり
付き合いで
どこかへ行ったり
家に帰らず
失踪したり
見えないレールに
乗っかって
決められた未知を行く
やがて
避けられない小石に
ぶつかって
今までやってきたことが
パー
ぐうの音も出ず
首チョッキン
そんな時もね
あるよ
脱線したら
戻ってこれない
だから
必死にしがみついて
ひかれたレールの
上を行く
誰かをひいても
自分を差しひいても
それでもなお
あなたのために
やりたいことがあるのなら
どこまでも走る
我が道じゃなくても
定められた道だとしても
走るよ
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授業で習った社会と違う
縮小されない歴史に刻む
アノ足コノ足
ぶつかって
複雑に絡む
ほどけない
もう歩けない
疲れたにゃあ
わたしとあなたの経済力
どっちが上か
一目瞭然
だから見ないふり
ごまかし笑い
踵を返して
ハンカチ噛み噛み悔し涙
絶滅せずに増え続け
未来へ未来へ突き進む
あなたわたしみんなみんな
みんな
紡がれ乱れくるくるくる
まるで毛糸の玉のよう
うしろに垂らす足跡は
のちの英雄独裁者
それとも名乗るほどの
者でもない者
途絶えた軌跡
人間社会とは何ぞや
授業を受ける宇宙人
窓の外ばかり見てる
つまんない
歴史にだけは
したくない
それまでは
死にたくないなあ
ホトトギス
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もう夕方か
斜面に落とされた長い影
自らを虐げるように
頬を引き裂いて
笑ってる
一切信用できないな
けれど
気が付けば
その削られた細腕に
むしゃぶり縋る
俺がいた
足を取られて
沈む陽は
手を伸ばしても
救えない
それと同じで
どんなに
もがき苦しんでも
心のうちは
一向に伝わらないもので
笑う角を曲がれば
目を背けていた山が見える
運悪く
しわ寄せ喰らった
死に体の山が
ひどく冷たい
投げやりな笑みは
最初から
俺をアテにしておらず
それどころか
一方的に
舐め睨めしていただけで
あっかんべえ
流れ出たボロは
やっぱり
役には立たなかった
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濁さずに
「」をつけて
言えたらなあ
じぶん磨き
どれだけ
ピカピカにしたってさ
わたしは私
価値は変わんないよ
なんて
言ってないで
たまにはさ
決めてみようよ
キザキザに
気持ちは変わるさ