詩人:高級スプーン似 | [投票][編集] |
いま聞いても新鮮な
物静かで
力強い声が
僕を揺さぶった
内側に意識が向いて寒い
あわ立ち 弾ける
インスピレーション
それらを逃すまいと
無数の触手になって
包(クル)む感覚
反対に
熱を帯びていく
発音せずに独り言
一日の流れから離れ
ふわふわと
実体のない海を泳ぐ
半世紀よりも前から
未来から吹く南風
その風を受け
返ってくるものは
力いっぱい叫んでも
誰の耳にも届かない
苦しむだけの声もある
それでも傾ける
聞こえてくるまで
待ち続け
形になるまで考える
そのまま外へ飛び出して
僕の声となり
出会う誰かを震わせる
宮沢賢治作
「生徒諸君に寄せる」を読んで
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渡す相手もいないのに
去れないじゃないか
ついさっきと同じ場所
同じポーズから
手足を動かし体を起こす
変わらない状況
むしろ悪くなっている
勝ち目はないのに
交替できずに
あらぬ方向を
見つめるばかり
悲しみがあった
嘲りと自虐
だけれど
笑いもあったんだ
いいじゃないか
ここらで終わりで
ブザマでも
区切りはいいぞ
幸せじゃないが
今ならいいだろ
静かな気持ち
輝きも目の前に
あとは
右手のバトン
渡す相手を探したら
いなかった
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どんより雲が覆う空
降りだしそうな雰囲気に
飲まれない俺は
まだ帰ろうとしない
兄が屋根裏に飾った
昆虫の標本
見ても感動せずに
怖がる俺は
閉じ込められない一瞬
自由な気がした
好きなフォームで
自転車漕いで
ぽつりぽつり落ちてくる
雨粒を避けろ
歴史にも
アルバムにも残らない
一瞬の間奏
あの時
何を考えたのか
忘れた
思い返すのにも疲れ
どっぷり夢に浸かる俺
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夢の始まりと同じように
今より手前が
思い出せない
けれど
どうやら半分以上が
崩壊(ダメ)になったそう
進んでいるけど
歩いているのか
みなどこか
自力じゃない気が
無機質なエントランス
人工的な光が反射
様々な顔が行き交う
座っている人まばらに
無邪気なわが子の笑顔に
疲れた顔で応える母も
会社帰り
帰れなくなった風の男
若者が4、5人で大爆笑
お前等こんな時に何を
と
ちらり怒り睨む中年
いつもより少し
殺伐としている程度
案外こんなもんか
パニックは意外と少ない
知らないあの子が
息を乱す
通り過ぎれば
視界から消える程度に
付属のエレベーターは
景色を楽しめるタイプ
気が付いたら
そこに乗っていて
最上階のボタンだけ
光っている
昇っていく
見えてくる全体
変わった町並みに
ようやく気付く
一目見て分かる
人を統べる人外
支配者の住む城
以前あそこは
テーマパークだった
これから先
どうなるんだろう
ありえない状況も
起こればすんなり
受け入れて
既に世界は
終わっていてもまだ
俺は生きている
夢ならとっくに
覚めているけどまだ
黒い雲々に塞がれて
暗く淀んだ
あの辺を
俺は見ている
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覚えているか
見ろよ この惨め
お前 薄目をあけ
反射した月の光を
反射して
俺を照らす
見ろよ この姿
猿だ 鬼だ バケモノだ
なのに
人の面を下げて
夜の道まで歩くのか
青く 冷たく映るのは
周りが暗いから
じゃない
枯れているから
お前 薄目をあけ
俺を照らす
身震いよりも速く
伝わる無音
根を張り 芽生え
辺り一面の火花
即座に散らし
防犯カメラは誰の為?
左胸 焼けて残る
映るものから
さりげなく逃げる
見ろよ おい見ろよ
忘れるな
開けた薄目に
映る姿を
見ろよ