詩人:高級スプーン似 | [投票][編集] |
はじめは気付きもしなかった
目が合ったのは
物心ついてすぐの時
むやみやたらと飛び起きて
遠ざけたのは少年のじぶん
受けいれられずに
背ける背にも
酷薄にも刻一刻と
近付いてくること
わかってしまう
今も変わらず耳を塞いで
こうして
気を紛らわしているというのに
「おいでおいで」しているよ
これ以上は蛇足だろうと
筆を置いたあとに
思い描く
心象の景観の中で
異彩を放っているから
続きは
期待できない岸の向こう
載せられないのが残念だ
本当にそう思うのか
いかがわしいところ
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どのような意図をもって
設計されたのかもわからずに
窮屈なトンネルを抜けていく
天地の境目すれすれに飛ぶ
ピンポンと跳ね返る音を残し
去り際までに振り返らずに
けれども
辿り着いたこの場所は
まだゴールには程遠い
無邪気に笑い
苦悩しないた
いくつもの難題を抱え
ある時は壁にぶつかり
ある時は途方に暮れた
向こう側に期待しては
それだけで満足をしたフリ
奇矯な振る舞い
黙って堪えて
悲しくなって
抱きしめるのはぬいぐるみ
感じる温もりは
生き滾る自身の血潮だと
気付かされてまた
なけばいいのに
すぐにでも
そうしないのは
強がりなのか
他の望みを外界へ
蹴り落としてまで
託す未来は見えなくて
客観的に理解すれば
面白おかしく
涙が出るよ
やがて
同じトンネルを潜る我が子へ
その心
伝える仕組みはなく
少しだけ形を変えて廻る命
根源
尽きて
果てること
迷うに及ばず
躊躇なく殺してしまえ
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夢がないと言って
部屋の隅に隠れる少女に
差し伸べる手は
何色か?
完成形を目指して
未完成であり続ける幸福
噛みしめている
とっくに味はない
そこで満足すれば
嗚咽が止まらなくなりそうで
いやだな
空っぽの胸
吐き出すものなど
ありゃしない
それこそ泡沫の
いいや
何でもない
大人びた少女が成熟し
真の大人になった時
味のない夢を
くちゃくちゃ言わす
おじさんを見て毒突く
「アンタ、それでも大人かよ」
想像するだけで怖くなり
部屋の隅に必死こいて隠れてる
震える尻だけが見えていて
とても滑稽
笑えはしないが
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お前の才能をくれよ
容姿が良くて羨ましい
性格も好感持てて疎ましい
その上
最愛の人が居て
妬ましい
家族が居て
友達が沢山居て
やりがいのある仕事を持って
目標に向かって邁進する
傍ら
大切な人たちを
一番に考えて行動している
お前はすごいな
恨めしい
こんな自分消えてなくなれ
でも怖いから
代わりにお前居なくなれ
そして
お前の全てをくれよ
そうして
手に入れた私は幸せか
お前みたいに
こなせない日々
ひび割れて
笑顔が張り裂けそうに
ああ
ため息ひとつにも
個性が無いな
それが私のすべてなら
もう何も望みはしない
心底
羨ましいお前
私の中から消えてなくなれ
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いつからだろう
記念日に慣れてしまったのは
誰かの誕生日
誰かの命日
何かの記念日
何かの何かを
祝うことも
呪うこともなくなったのは
去年の今頃も
忘れていたよね
誰かに言われて
初めて気付く
忘れたことも
忘れていたよ
何か思うところもなく
心の所在は
ありもしない幻想に
どこだそれは
どこなんだ?
かえるべき初心
見つけられずに
記念日に慣れてしまった
この世界に慣れてしまった
誰かが死んだこと
誰かと生きること
今日に生きること
昨日に生きたこと
明日が来るまでに
見つけ出せるか
お探しのものは
何でしょうか
答える我は居らず
心ここに在らず
忘却の彼方
誰かのいない日にも
慣れてしまった
誰かの顏すら
誰の顔かすら
もう思い出せなくて
きみは誰なのか
ぼくは誰なのか
誰でもいいや
慣れてしまえば
ところで
今日は何の記念日だっけ?
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実在の人物や団体とは
一切関係ないらしい
それらのおはなしは
ここではないどこかに
僕等を連れて行ってくれる
日曜夜六時半の物語が
別に嫌いじゃない君は
夜な夜な街を徘徊し
殺人鬼やサイコパス
極悪非道の
人でなしが引き起こした
残虐な事件を思い返す
無軌道に揺れるいのちが
まだこの世に
べったりとはりついて
離れていかないのは
真っ赤なウソにこそ
引力
救いがあるからだ
辛苦に染まる現状を前に
頭を抱えるように
震わせる拳
開いてみれば
一握の砂さえもない
誰彼とも無関係な
責任逃れの夢物語
すがりつくほかないのだろう
それなら書くしかないな
たとえ虚構と呼ばれても
君という名の赤の他人とは
縁もゆかりもない話を
身もふたもない真実を
ここに
この物語はフィクションです
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己の欠陥を
誰にも知られず
発見できても
もう末期
心の芯まで
侵されて
手の施しようが
ありません
どれだけ
自分を偽っても
内側からは
丸見えで
そんな自分を嫌っても
核となる部分は
変えられないんだ
あなたやきみは
いくらでも
騙せるけれど
罪悪感を
これでもかと
募らせるだけ
可愛いわたしに
下せる罰など
ありません
誰彼かまわず
頭を下げて
恥ずかしげもなく
許しを乞えば
誰か
頭を撫でてくれますか?
いいわけないよね
承認されないと
わかっているから
今日も笑顔を崩さない
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いま生きたい理由が見つからない
そうして
ネットサーフィン
溺れる自分を探すけど
「だれか助けて」
絞り出したSOSは
狂った世相に
喧噪の波に飲み込まれる
むかし掲げた目標は
跡形もなく
抗う渦中
わらにも縋る思いで
手にした未来は
見る影もなく
虚しく沈む意識
だれでもいい
ひとりはいやだ
あなたの足を掴んで
引き摺り込んでいればと
悔やむ
わたしはすでに死んでいる
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いくら気に病んでも
安心できない世の中
手に余る憂鬱が
月曜日を停めた
誰が地球の裏側まで
心配しろと言った?
友だちとあの子が
楽しそうに笑ってる
こういう
ひとときの平和を
永遠に思いながら
寿命で死ねば
いいものを
人が人を殺す
一方で
人が人を生かす
一方で
人が人を犯す
一方で
僕は知らない顏をして
朝までカラオケ
愛や恋を歌う
君の声に耳を委ねる
必要の二文字が
平和を阻む
不必要の三文字が
憎しみを増やす
世界平和の四文字が
感覚を麻痺させる
実現不可能だ
されど
信じる者にのみ
幸福は訪れる
あの子の笑顔の半分は
DV彼氏が見せる
気まぐれの優しさで
あの子の笑顔の半分は
カルト宗教にハマる
母親から学んだ人の愛し方で
いやらしい手つきで
マイクを握る
彼女を見て
笑顔で悲しんで
その実
興奮している僕は
何が悲しくて
ここにいるんだ?
終了十分前のコール
席を立つ
友だちとあの子と僕の
隣の部屋は空っぽ
まるで
誰かの頭か心みたいだ
不安や罪や煩悩に苛む
月曜日よふたたび
彼女の心傷すら癒せないのに
地球の裏側のことまで気に病んで
日がな一日
憂鬱になる行為に時間を費やす誰かに
名前をつけるなら
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アイをうたう
ファッションポエムに
クラクラして
十年後
アイも変わらず
ドクハクジブンに
ヘキエキして
百年後
墓場に来たろう
溜息が
火の玉になって
漂うような
焼かれたあとも
嘆くのか