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高級スプーン似の部屋


[229] 響かない緑
詩人:高級スプーン似 [投票][得票][編集]

砂のない砂漠
もちろん緑はなくて
歩けば君に当たる
周囲を見渡すと
辺り一面 君ばかり
どこを歩いても
君に当たる
君は
自分のことばかり
考えている

心は青かった
産まれた時は誰だって

なのに
白が消えて
赤が消えて
青が消えて
緑も消えた

月のない
草木の生えない
虫すら鳴かない
救いの手 届かない
色つやのない暗闇で
呼吸をしている
吸っても吐いても
どこにも行けない
歩けば君に躓いて

自分に当たっては
傷ついて
君は君を見る
そして
すぐに顔を伏せる

目の前にあるのは
誰かとの繋がり
手を伸ばせば
届くかもしれない
紙飛行機のような
一方通行の

世界一面に
びっしりと描かれたのは
君・君・君

赤もない
青もない
月もない
虫もいない
君以外
誰もいない
緑のない 景色

いつからだろう
君の中に
君しかいなくなったのは

月のない月面
もちろん光はなくて
歩けば君に当たる
見渡す限り
君しかいない宇宙

不自然な自然の中で
望みが絶えた気分になり
うなだれた
君の目に映るのは
目の前にあるのは

あらゆる摂理に逆らって
君に向かって垂れる手は
蜘蛛の糸のよう
とてもか細くて

思わず伸ばした
その手が掴むのは

心に触れて

芽吹くのは

2010/05/21 (Fri)

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