詩人:高級スプーン似 | [投票][編集] |
九年前の二年目。
彼は身を粉にして心力を注ぎ、自らの命を削って魂を吹き込んでいく。
離れた場所からそれを言葉にするのは、とても簡単なことだ。
誰にでも書ける。
けれど、懸けるものがなければ、芽吹きもしない。
無精卵は夢を見ないから。
白紙の部屋の骨組みが見えなくなるまで、彼は集中力を高めていく。
頭を抱えながら激痛に堪え忍び、苦しみ抜いた先に煌めく一瞬を。
逃すものかと、彼は飛び出した。
研ぎ澄ませた直感で、閃きを掴め。
白紙の部屋に上がる産声。
意識の外に現れた。
ちいさないのち。
彼は顔を綻ばせながら、自身の頬に伝う涙に目もくれずにその手を伸ばした。
小さな命を胸に抱いて、心から想う。
ありがとう。
生まれてくれて。
<POET10YEARS:number=02>
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