十年前の一年目。深く深く、昏い海の底へと打ち上げられた彼の意識は、白紙の部屋に不時着した。額縁があれば、そこに絵を飾りたくなるのが本能か。彼は考えるよりも先に筆を持ち、思いを注いで書きはじめた。白紙の部屋で、己と対話をするかのように。すらすらとはいかない。けれど、確かな第一歩。<P***1*Y***S:number=01>
[前頁] [高級スプーン似の部屋] [次頁]