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高級スプーン似の部屋


[407] わけありわけめなし
詩人:高級スプーン似 [投票][得票][編集]

こりこりこり
人差し指で
左胸を削っていく
貫通しても
まだ息をしている
折れた首で
ぽっかり空いた胸の穴
覗き込んだら
景色が見えた
滴る血も涙もないが
眼球はある
心はどこへ

こりこりこり
人差し指で
左胸の穴を拡げていく
切り離された
下半身は
上半身を
取り残したまま
どこかに去っていった

されど
転ばぬ先の知恵は健在で
ぼくは考える
ずっと考えている
物心ついた時から今まで
望みが絶えても
死なないわけを
自分に問い続けている

同じように考えている
みんなと協力し
答を出しあっても
やがて戦争が始まって
燃え盛る炎の中でも
まだ探しているんだろう

事実を
受け入れられる現実を

もう
アナタ
とっくに死んでいるのに

2012/05/09 (Wed)

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